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プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「僕のミスです」涙を浮かべた内川聖一WBC”痛恨の盗塁ミス”を井端弘和が語る「万に一つのチャンスを狙わなければ」「一番の要因は…」
posted2023/03/08 17:48
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Getty Images
誰もが忘れられないワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の痛恨場面といえば、やはり2013年の第3回大会準決勝のプエルトリコ戦で起こったダブルスチールの失敗だろう。
薄氷の試合を制して日本ラウンドを勝ち抜き、米国での決勝ラウンド進出を果たした日本代表。チームを率いる山本浩二監督の下で3連覇への夢を膨らませたが、その夢はあっさりと萎んでしまった。
なぜあのプレーが起こったのか。二塁走者として呆然と一塁走者の内川聖一外野手がタッチアウトになる場面を見ることしかできなかったのが、井端弘和さんだった。
このプエルトリコ戦の日本の先発はメジャー挑戦前の広島・前田健太投手。その前田は初回に1点は失ったが、その後は踏ん張り5回を4安打1失点で切り抜けた。しかし7回に2番手の能見篤史投手が捕まり2点を失う。一方の打線はプエルトリコの投手陣に7回までわずか3安打に抑えられて迎えた8回だった。
プレシャーのかかる場面でスチールのサインが…
この回1死から1番の鳥谷敬内野手が右中間を破る三塁打を放つ。そして打席に入ったのが、日本ラウンドからチームの首位打者を走る絶好調の井端さんだった。
前編で紹介したように「国際大会では逆方向」と語る井端さん。その言葉通りにカウント1ボール2ストライクからの4球目、外角高めにシュート回転で入ってきた球を、ライナーでライト前に弾き返すタイムリー安打して、ようやく日本に待望の1点が刻まれた。そして続く3番の内川聖一外野手も内角高めの球をおっつけて右前に運んで一、二塁とチャンスは一気に広がった。
ここで左打席に4番の阿部慎之助捕手を迎えると、プエルトリコベンチは左投手にスイッチ。
「替わったピッチャーのクイックのタイムは遅いからと言われていました。それでとりあえず1球目は間合いを測れという感じで、2球目に行けたら行けというスチールのサインが出ました」
ギャンブルだった。
2次ラウンドの台湾戦でも9回2死から鳥谷の盗塁でチャンスを広げて、井端さんのタイムリーで追いついている。機動力は侍ジャパンの大きな武器で、もし成功すれば二、三塁となり一打同点へと一気にチャンスは広がる。
ただ走る方は相当なプレッシャーのかかる場面でもあった。しかもプエルトリコの捕手は、強肩を誇り“世界一のキャッチャー”と言われたヤディエル・モリーナだ。