WBCに臨む選手に伝えることがあるとしたら…

　一塁の塁上でベンチに向かって両手を振ってガオーポーズ。まさに仕事師らしい一撃で井端さんが日本を救った第3回大会の名場面である。

「WBCに臨む選手たちに伝えることがあるとしたら、やっぱり国際試合ではセンター方向ということ。そこを意識した方が、僕は確率が高くなると思います」

　井端さんはこう語る。

「国際大会では相手の投手がどんなボールを投げてくるか、打席に立たないと分からない。今はさまざまなデータもある。ただそういうデータとかビデオとかをいくら一生懸命に見ても、実際に打席に立たないと分からない部分があるんです。ボールが動くといっても、どれくらい動いているのかは、打席の中でしか分からないところがある。だとすればそこはもうボールを少しでも長く見られる、右方向を意識して立った方が確率は上がりますよね」

　実は井端さんはこの台湾戦で改めてそのことを痛感した場面があったのだという。

　先発の王に対して2度目の対戦となった3回の打席だ。

「第1打席にちょっとおっつけ気味にセンター前にヒットを打って、そのときはやっぱおっつけか、と思ったんです。でもなぜか次の打席で引っ張ってやろうとか思っちゃったんですよ。まんまと三塁ゴロに打ちとられて、こりゃダメだと。で、切り替えて、うまくそうやってファウルを打っていけるようになって、次の打席でフォアボールを選んでそこからです。だからやっぱり反対方向だと思いますよね」

　この大会で井端さんは最終的には23打席18打数10安打の打率5割5分6厘という驚異的なアベレージでベストナインにも選ばれている。その打撃の根底にあったのは、内川と交わした国際試合での打撃セオリーだったのである。

　そんな井端さんが自分自身の指導者としての教訓も残ったという、痛恨の重盗失敗。その背景にはどんなことがあったのだろうか。

＜後編に続く＞

#2に続く

「僕のミスです」涙を浮かべた内川聖一WBC”痛恨の盗塁ミス”を井端弘和が語る「万に一つのチャンスを狙わなければ」「一番の要因は…」

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