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「ミルコの膝で藤田の皮膚がえぐれて…」“プロレスハンター”ミルコ・クロコップは記者ともバチバチだった？「お前はどこを見ていたんだ」
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2023/03/05 12:21
2004年、インタビューに答えるミルコ・クロコップ。PRIDEの煽りVで発した「お前は何を言っているんだ」というフレーズはネットミームにもなった
2001年のミルコは11月に高田延彦、大晦日には新日本プロレスの永田裕志とMMAルールで対戦。永田戦はわずか21秒で圧巻のKOを見せ、8月の藤田と相次いでプロレスラーを秒殺することになった。これ以降ミルコは「プロレスハンター」と呼ばれ、世間でもその名前を知られるようになっていく。
「お前の目はいったいどこを見ていたんだ？」
2002年、ミルコはK-1とPRIDEの両団体で活躍し、日本の格闘技界を牽引した。3月のK-1では前年のグランプリ王者マーク・ハントからハイキックでダウンを奪って判定勝ち。翌月のPRIDEではミドル級王者のヴァンダレイ・シウバと特別ルールで引き分け。8月には、格闘技史上最大のイベント『Dynamite!』が国立競技場で開催され、メインイベントで桜庭和志と対戦した。
序盤こそペースを握られていたが、下からの蹴り上げで桜庭を眼窩底骨折に追い込み、TKO勝ち。失意の桜庭とは対照的に、9万人以上の観客の前で勝ち名乗りを受けるミルコは実に誇らしげで、あっぱれと言うほかなかった。
2003年3月には、K-1ルールでボブ・サップと対戦。サップはその巨体とパワーで、ミルコの天敵アーネスト・ホーストを2度もKOしていた。そんな相手にミルコはわずか86秒で勝利。ダウンしたときに目を押さえたサップの痛がりようが尋常ではなかった。
「お前の目はいったいどこを見ていたんだ？」
試合後、私の旧知の記者が「目を狙ったのか」と質問したことに対するミルコの答えだった。その記者の見解は当たっていたし、他の選手なら「はい、狙っていました」と答えるのだが、この手厳しさ、ふてぶてしさがいかにもミルコらしい。
同試合の2日前のことである。オフィシャルとして選手のスタジオ撮影をしたのだが、ミルコは時間になっても姿を現さなかった。スタッフが慌てて連絡をとったところ、撮影には来ないという。スタジオ撮影は契約書にも明記されている重要な義務であるはずなのだが、ミルコなら仕方がないと我々も諦めた。翌日の記者会見にも欠席したと聞いたときには、本当にミルコは来日しているのかとさえ思ったほどだ。
しばらくした後、関係者が真相を教えてくれた。サップ戦前のミルコは高熱が続き、試合をするのが精一杯の状態だったという。人前に出て体調不良であることを対戦相手に悟られることを拒み、周囲にどう思われようと体力の回復に努め、目の前の試合に集中したかったのだろう。
