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元天才少女が苦しんだ“誹謗中傷”と“理想とのギャップ”…痛烈DM、コースで嘔吐の日々を乗り越えた33歳キンクミ涙の復活劇 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byTaichi Chiba

posted2023/02/28 11:05

元天才少女が苦しんだ“誹謗中傷”と“理想とのギャップ”…痛烈DM、コースで嘔吐の日々を乗り越えた33歳キンクミ涙の復活劇<Number Web> photograph by Taichi Chiba

若手時代から注目を集めてきた金田久美子(33歳)「免疫はある」としながらも、SNSで目にする痛烈な言葉に落ち込んだと赤裸々に明かした

 誹謗中傷が新種のストレスだとすれば、自分自身への期待という旧来のストレスも金田を苦しめてきた。

 金田の小さい頃からのアイドルはタイガー・ウッズ。毎試合のように優勝争いするゴルファーが自らの理想像だった。それが近年は安定した成績を残せなくなり、優勝争いはおろか賞金シードを取れないこともしばしば。ひどい時には50cmのパットが入らなくなり、ドライバーが150ヤード飛ばないような大スランプも経験したという。

 シードがあっても勝てなければ悩み、シードすら取れなくなれば悩みは一層深まる。どんどん理想からかけ離れていく自分。そのギャップに心身ともに蝕まれていく。

トイレで嘔吐、練習日に泣き出す日々

 コースのトイレで嘔吐するようになったのは5、6年前のこと。2019年には6試合連続など、35試合中19戦で予選落ちを喫した。

 どん底だったその時期、まだ試合も始まっていない公式練習日にコースへと向かう車に乗っただけで泣いてしまうようになっていた。

「その頃はもうゴルフするのが辛かったかなあ。最初は試合に出るのが辛いから始まって、ゴルフをするのが辛いに変わっていった。練習ラウンドからもう涙が出てくるし、それでも練習はしなきゃいけないし」

 それほどボロボロだったのなら休んだ方がよかったかもしれない。金田はそうしなかった。ボロボロでも練習しなきゃいけないと思った理由は単純なものだった。

「ダサい自分が嫌だったから」

 キラキラしたSNSでの姿からは遠く離れた泥臭い思いは、11年ぶりの優勝となって美しく実った。

「勝った時に『このために今までやってたんだな』と思ったんです。その日がくることを夢見て頑張ってたんだなって。でも信じられないことの方が多かったですよ。もう勝てないって何年も思ってたし、まさか自分がこんなにみんなに祝ってもらえるなんて思ってませんでした」

 2月上旬、新シーズンに向けて準備を続けていた金田は、珍しくインスタにトレーニング姿をアップした。

『練習してるの?の虫が湧いてきたので
さっきのやつでも載せようか。
映えないから載せたくないの。草』

 懲りない連中への金田流のファイティングポーズ。

『毎日朝から練習トレーニングして
合間に取材も受けながら
過ごしているから安心して下さい。
以上』

 ネットの向こう側でそれを受け取った人たちは安心してくれただろうか。

#3へ続く)

金田久美子(かねだ・くみこ)

1989年8月14日、愛知県生まれ。父の影響で3歳からゴルフを始め、8歳で世界ジュニア優勝。2002年リゾートトラストレディスで当時最年少の12歳9カ月で予選通過。アマチュア時代から優勝争いするなど活躍し、08年予選会をトップ通過してプロ転向。2011年のフジサンケイクラシックでツアー初優勝。2022年の樋口久子三菱電機レディスでツアー歴代最長ブランク優勝となる11年189日ぶりのツアー2勝目を挙げた。166cm

#3に続く
「昔はイキってた。今はイキってない!」ゴルフ界の異端児“ギャルファー”金田久美子33歳はいつから「謙虚な人」を目指すようになった?

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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