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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「日本だといい情報ばかりだけど…」昨年現役引退・牧田和久38歳が明かす“米国&台湾生活”「チームメイトと打ち解けた“あの漫画のイラスト”」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2023/02/28 17:01
WBC日本代表の守護神としても活躍し、現役後半では台湾リーグも経験するなど独自のキャリアを築いた牧田和久氏
――過酷な野球漬けの生活の中、新たな発見や心境の変化もあった?
牧田 AAにいた時ですかね。ハードな日程で年俸も100万円くらいしかもらえないのに、選手たちがみんなすごく楽しそうに野球をやっていた。『なんでそんなに楽しめるの?』と聞いたら『アメリカンドリームをつかむため。自分の好きな野球だから楽しいよ、マキ』って。ああ、これだよな、って。そんな環境で投げていると、純粋に自分が好きな野球をやっているんだな、という実感を得られました。
あとは文化の違いで、個性があって当たり前なので、周りの目を気にして行動する、ということがない。結果さえ出せば、その他のことは何も言われません。日本のプロ野球は上下関係や礼儀、規律があって、結果だけではなく性格や振る舞いを重視されることもあります。日本の良さである反面、それで殻に閉じこもって力を発揮できない選手は沢山いるのかなとも思います。そういう意味では今回、藤浪(晋太郎)投手のメジャー挑戦は楽しみにしています。
西武ではなく楽天加入を決めた理由
――2019年秋、帰国後に選んだ新天地は、古巣の西武ではなく楽天だった。帰還を待ち侘びた西武ファンからは厳しい声も届いたが、その決断にはどんな思いがあったのか。
牧田 自分が西武を離れてから2018、19年とリーグ優勝している。元々いいチームだというのは身をもって知っていましたが、純粋にあの強力打線と対戦してみたいという気持ちが湧いてきたんです。アメリカに行ったことで色々な経験ができたので、1つの球団にとどまらず、他のチームのことを知りたいという思いも強かった。
でもこれだけは伝えたいのが、ライオンズには本当に感謝しているということ。ポスティングで快く送り出してくれたからこそ、素晴らしい経験ができた。当時のファンの思いは裏切ってしまったのかもしれないけれど、吸収したものを糧にこれから野球界に恩返しをしていきたいと思っています。
台湾リーグは「昭和の日本にタイムスリップした感じ」
――楽天から戦力外通告を受けた後、2022年には、台湾リーグ「中信兄弟」に新天地を求めた。台中を本拠地として、監督は阪神に所属した林威助が務めるという縁もあった。コロナ禍での移籍ということもあり、驚くような経験も沢山あったとか。
牧田 空港に着いて荷物を取って出る時に頭の上からミストシャワーが降ってきたんですが、何かと思ったら消毒液。全身ずぶ濡れになってびちゃびちゃのままタクシーに乗り、高速道路のサービスエリアでトイレに入ったら、ドアを開けるなり真っ黒な塊がブワーッと。無数のハエが飛び出してきたんですよ。マスクしていてよかった(笑)。二軍の寮ではトカゲが出たり、蟻の大群やゴキブリ……虫には色々と悩まされましたね。
――なかなか楽しそうな環境だが、ここでも新たな出会いと発見が?
牧田 いや、実際めちゃめちゃ楽しかったです。野球をやる環境としては恵まれていないのかもしれませんが、人がとても温かいんですよ。昭和の日本にタイムスリップしたみたいな感じ。屋台があったり、路地でバーベキューしたりして。クラブハウスにチームの共有スペースがあるんですけど、そこでみんなで何か持ち寄ってパーティーをしたこともありました。僕は選手たちにたこ焼きを焼いて振る舞ったりしましたね。