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アントニオ猪木が最後に食べた料理は「オークラのヴィシソワーズ」だった…盟友が明かす“猪木の愛した逸品”「オニオンリング、できる?」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/02/20 11:03
「オニオンリング、できる?」の一言で生まれた逸品。アントニオ猪木はいつも笑顔で「猪木スペシャル」のフライド・オニオンリングを食した
ハイランダーには政財界、芸能界の著名人もよく来ていた。そこは誰もが適度な距離を保って軽く会釈するような、大人たちの落ち着ける社交場だった。かつてジョン・レノンが定位置としていた席もあって、そこには内田裕也が「オレの席だ」といって座っていたという。
「内田さんは猪木ファンで、リスペクトしている猪木会長を見かけると必ず挨拶に来ていました」
ホテルの改築、そして新規開業工事でハイランダーはなくなり、2019年から猪木の居場所は『オーキッドバー』や『オールデイダイニング オーキッド』に移った。
猪木が愛したヴィシソワーズとオニオンリング
猪木は美食家だ。
オークラのヴィシソワーズは猪木のお気に入りだった。多くのお客さんに愛されているジャガイモの冷製スープだが、これを猪木は毎回、頼んだ。体が弱ってからもヴィシソワーズは欠かさなかった。亡くなる4日前の夜と、その翌朝も萩さんが自宅に届けたものを少し飲んだ。オークラのヴィシソワーズは、猪木が食した最後の料理になった。
「ベースはジャガイモです。タマネギ、西洋ネギをよく炒めて、チキンブイヨンで柔らかくしてミキサーで回し、ジャガイモのピューレ、野菜のピューレを作って、牛乳と生クリームで伸ばしていきます」(『オールデイダイニング オーキッド』増山昭シェフ)
萩さんは、2021年8月に猪木が退院すると、毎週、月曜日の13時にヴィシソワーズと卵サンドを自宅に届けて、ランチを一緒に食べた。サンドウィッチは自分の分と半分ずつ交換することもあった。「オニオンリングを持ってきてよ」とも言われたが、塩分のコントロールが必要になっていた猪木の体によくないと思い、これは月に1回にした。
「塩分をとるゼリーがあって、これはおいしくないようでしたが、猪木会長は仕方なく食べていましたね」
萩さんはハイランダー時代のある日、「オニオンリング、できる?」と猪木に聞かれた。メニューにはなかった。キッチンに聞いてみると「できる」というので、それから猪木はフライド・オニオンリングをオーダーするようになった。