フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
謝る村元哉中に高橋大輔は「大丈夫、大丈夫」転倒もあった演技直後、2人が交わした“会話の中身”…結成3年目、かなだいの絆はこう深まった
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2023/02/16 17:02
四大陸選手権では9位となった村元・高橋。それでも、3年目の絆や収穫の見える大会だった
演技直後に氷上で二人が交わした会話の中身
滑り終わった二人は、氷の上でどんな会話をしたのか。
「ごめーんって……」と村元。
「大丈夫、大丈夫。たぶん大丈夫って」と高橋が続けた。カップル競技は、片方が失敗すれば相手の足を引っ張ることになる。だがそれも、お互い様のことだ。
「確実にレベル取れるようにディープエッジでやってきた。標高が高くて自分が思ってる以上に脚に来ていたと思うし、色んなことが重なっていたんだと思う。僕自身ツイズルでもバランスを崩して、結構自分の中でバタバタしていたんですけど、そんな中でもまとめられたかなと」。そう高橋は言う。
標高1800メートルの影響は、到着してから3、4日後がもっとも強いと言われているため、マリナ・ズエヴァコーチの判断で試合直前に現地入りした。実際、滑ってみてどうだったのだろうか。
「なんか練習ではあんまり感じなかったんですけど、全部通すときつかったです。でも思ったよりかは」。そう言う村元の横で、高橋は「きつかったです!」と何度か繰り返した。
高橋まさかの転倒「ぷつっと来てしまって」
フリーは大会最終日、2月12日に行われた。今季のフリー「オペラ座の怪人」は、二人でわざわざニューヨークのブロードウェイまで見に行った、思い入れの深いプログラムだ。
順調にすすんできていたが、終盤のステップで今度は高橋が転倒した。観客席から、どよめきと悲鳴が聞こえた。その直後に、最後のリフトの部分でバランスを崩して再び転倒してしまった。高橋は悔しさを隠せない表情で、演技を終えた。
「意外に僕の中では脚に来ていなかったんですけど、転倒してしまってからぷつっと来てしまって。最後まで集中力が続かなかったというのはあるかもしれないです」
高橋大輔といえば、シングル時代そのステップは世界一と言われた。あのような転び方をした理由はなんなのだろう。
「カウンター(ターン)に入るんですけど、早く入りすぎて、戻そうと思ったらバランスを崩してしまって」。シングルだったら、タイミングは自分一人で決められる。だがそこはやはりカップル競技の難しさだ。リフトの転倒の理由は何だったのか。
「体力もあったと思いますし、タイミングもバラバラだったりとか。色々ですかね……」。高橋がそう言うと、村元がこう続けた。
「それまでは本当にいい滑りをしていたので、ミスはもう仕方ない。全然大丈夫です。カナもリズム(ダンス)失敗したから」とすっきりした笑顔を見せた。