ミスもリカバー…木原の言葉に感じた“余裕”

　初日のSP「You'll Never Walk Alone」では、三浦が3トウループで転倒という珍しいミスが出た。それでも素早く立ち直って、残りをノーミスで滑り切った。転倒しても70点台を出したのは、他のエレメンツはノーミスで、リフトやスピンなどでしっかりレベル4がとれていたためもある。

　どうやって瞬時に気持ちを切り替えたのか。

「ディダクション（減点）がついてしまったので、次の技の精度を上げようと思って自然と切り替えることができました」。三浦はそう説明した。

　一方、転んだ遅れを取り戻そうとしていた三浦に手を差し出しながら、滑り続けていた木原はその時どんなことを考えていたのだろうか。

「どこから音を拾おうかなと思って。しっかり元通り入れば技をしっかり嵌められる自信はあったので。どこからトランジション、二人の動きを合わせようかと考えていました」

　そう語った木原の言葉には、積み上げてきたトレーニングと、試合の実績に裏付けられた余裕が感じられた。

「毎回完璧な演技ができたらもちろんベストですけど、我々人間なので毎回完璧な、毎回ベストを更新するというのは不可能ですので……。シーズンは長い。今日みたいな日もあると思うので、また明日頑張ろうと思っていました」

優勝を決めたフリーの演技　©AFLO

絶対戻したいと語る「ベイビーキャッチ」とは

　フリーでは、新しい技にもチャレンジした。3＋2トウループにさらに2アクセルを加えて、ジャンプシークエンスにしたのである。昨夏に三浦が肩の脱臼の怪我をして、トレーニングが2カ月遅れていなければ、今季最初から入れる予定だった。

　その一方、怪我の影響で抜いたままの技もある。木原が開いた足の下を、両手を握った姿勢で三浦を後ろからするりとくぐらせ、引っ張りあげた勢いで、お姫様だっこの姿勢にキャッチする。コーチのメーガン・デュハメルから教わった技だが、名前がないので「ベイビーキャッチ」と呼んでいるのだという。ポイントのあるエレメントではないが、彼らのトレードマークでもあり、プログラムを盛り上げるトランジションの一つだ。

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