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「脱走は5回以上」“最後のアイドルレスラー”納見佳容(46歳)が今明かす、過酷すぎた全女新人時代「いじめのターゲットにさえならなかった」
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byL)Yuki Suenaga、R)東京スポーツ新聞社
posted2023/01/18 11:01
“全女最後のアイドルレスラー”と呼ばれた納見佳容さん。過酷だった新人時代と全女の崩壊を振り返った
全女では「いじめ」のターゲットにさえならなかった
――先輩に謝らずに、実家の愛知県に帰ったんですか?
納見 なんですけど、奈苗さんが「どっか行く?」って言ってくれて、私はもう帰る気満々だから、「渋谷に行ってみたい」って言って、映画を観たりして一日遊びました。
――奈苗さんの姉貴っぷりがすごい。
納見 だから、頼ってばかりなんです。結果的に、私は謝って戻してもらえるんですけど、入れ替わるようにして、奈苗さんが辞めちゃう。3回目は、同期のもが(最上眞理)と新人2人だけになって、今度は“全女あるある”で、先輩から怒られて会場からいなくなってしまう。4回目は、ちゃんと国マネージャー(松永国松)と話をして、九州から飛行機で実家に帰りました。5回目は、もうとっくに限界を感じていたんで、だましだまし続けて、横浜アリーナ(96年3月31日)までは残ろうとしたけど、その日に失踪……。
――逃げてばかり。
納見 そうなんです。先輩から怒られて、怖いから実家に帰るとか、そんなことをしない選手が全女で続けているわけで。でも、私はそこで逃げちゃうから、信頼してもらえるはずがない。どんどん居場所がなくなる。そりゃ、そうですよね。仕事をほったらかしにするんだから。
――先輩からいじめられませんでしたか?
納見 いわゆる上の選手からは、いじめるターゲットにさえならなかったと思う。名前も覚えられていなかったかも。そのかわり、1つ上の代の方がよく怒られてました、自分たちができないから。全女って、そういうところがあるんですよ。
エステ就職を経て再び全女へ「辞めたことを後悔してました」
――“逃げて”からは、どんな生活を送っていたんですか。
納見 辞めたことを後悔してましたね、ずっと。1カ月ぐらいは家に引きこもっちゃって、最初にプロレスを観るきっかけとなった友達が引っぱりだしてくれたことで、少しずつ外に出るようになって、すごい元気になった。6歳上に姉がいるんですけど、姉がエステのお仕事をしていたので、「私もやってみる」って就職しました。社内テストを受けて、チェーン店があるので、各サロンに配属されていくっていう流れで、美顔、脱毛、瘦身を担当。もうプロレスを引きずってちゃいけないと思ってたんで、そこはすごい集中して。毎日終電近くまで働いてました。1年ぐらいかな、やってましたね。