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写真集は4冊発売…『キッスの世界』でも活躍した“アイドルレスラー”納見佳容が振り返る「あの帯は嫌だった」「感情は二の次。麻痺してました」
posted2023/01/18 11:02
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph by
L)本人提供、R)Yuki Suenaga
今年配信予定のNetflixオリジナルドラマシリーズ「極悪女王」では、史上最恐のヒール(悪役)ユニット「極悪同盟」総帥・ダンプ松本を軸にした、80年代の女子プロ大ブームが描かれる。全日本女子プロレス興業は、この極悪やクラッシュ・ギャルズといったスーパースターの出現とバブル経済によって、巨万の富を手に入れた。しかし、数億円単位の株式運用に失敗して、90年代中盤から凋落。97年には14選手が離脱。納見佳容が再入団したのは、そのタイミングだった。
細い手足に小さな顔、エキゾチックな大きな瞳の納見が、アイドル路線を歩まされるのは自然の理。ソロでテレビCMに出演、グループで歌手デビュー、DVDと写真集をリリースしたほか、“ラストアイドル”は04年の引退まで疾走した。
◆◆◆
「アイドル路線」への葛藤があった
納見 戻ってすぐに、健康食品のパンフレットとちらしのモデルの仕事が来ました。(松永高司)会長がすごい喜んでくれて、それがすごいうれしかったのを覚えてる。
――自分ではなく、会長が喜んだことがうれしかった?
納見 そうなんです。さっきは平成7年のデビューのときの嫌な思い出ばかり言っちゃったけど、ほのぼのした思い出も実はあって。私、初めて出た雑誌に「会長にタメ口をきく宇宙人」って書かれたくらい、会長を近所のおじさんぐらいに思ってて(笑)。ほんとに大好きで。新人のころは、練習が終わって先輩が帰ったあとの(午後)10時とか11時ぐらいからが自分たちの自由時間で、(道場の上階にあった)事務所に上がってくと、1回帰った会長と(松永健司)副会長が戻ってきてて、全女が経営してたカルビ丼のお店とかを回るんですね。今思うとたぶん、売上金の回収だったと思うけど、そこに私ともが(同期の最上眞理)が付いていく。私たちが、(併設されていた)寮に戻ってても「行くぞー!」って呼んでくれて、他愛のない話をして、カルビ丼を食べて帰ってくるだけなんですけどね。
――大好きな会長が喜んでくれるから、その後に歩まされたアイドル路線もがんばることができたと。
納見 んー、そこは葛藤があったと思う。「キッスの世界」の前と後は、特に。
――キッスの世界は2000年に、つんく(現:つんく♂)さんプロデュースとフジテレビの全面バックアップで結成された納見さん、高橋奈苗さん(当時)、脇澤美穂さん、中西百重さんによるガールズユニット。つまり、この誕生前は、ソロでアイドルとして売りだされるのが嫌だったと。