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羽生善治九段「何が悪かったのか、調べてみないとわからない」…藤井聡太五冠が「現代最強者の将棋」たる凄みとは〈王将戦第1局振り返り〉

posted2023/01/12 11:01

 
羽生善治九段「何が悪かったのか、調べてみないとわからない」…藤井聡太五冠が「現代最強者の将棋」たる凄みとは〈王将戦第1局振り返り〉<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

終局後の藤井聡太王将と羽生善治九段。まず第1局を制したのは藤井王将だった

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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 2023年初頭の大勝負は、藤井聡太王将(20=竜王・王位・叡王・棋聖を含めて五冠)に羽生善治九段(52)が挑戦している、第72期ALSOK杯王将戦七番勝負だ。

 藤井王将は2020年からタイトル戦を11期連続で制覇している「令和の最強者」。羽生九段はタイトル獲得が歴代1位(99期)である「平成の王者」。そんな両者がタイトル戦で初めて対決した。王将戦の展望と第1局の戦いについて、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】

藤井四段デビューから6年後、羽生九段は挑戦者として

 2017年に藤井四段がデビュー戦から29連勝の新記録を打ち立てたとき、羽生三冠は「ひのき舞台で顔を合わせる日を楽しみにしています」とコメントした。ひのき舞台とは、タイトル戦の対局のこと。当時は羽生が藤井の挑戦を待ち受けていた。

 それから6年後の2023年の王将戦は、保持者の藤井が羽生の挑戦を受けて立場が逆になった。

 2017年に羽生棋聖は渡辺明竜王を破って竜王を獲得し、「永世七冠」の偉業を達成した。その後、2018年に竜王を失冠して以来、無冠の時期が4年以上も続いている。2021年度の公式戦の成績は初めて3割台で負け越し、順位戦でA級から陥落した。

 しかし、2022年はV字回復を見事に果たした。難関の王将戦リーグで6戦全勝し、藤井王将への挑戦権を得たのだ。タイトル戦への登場は2年ぶりで、タイトル獲得100期の大台に迫っている。なお、王将戦挑戦を祝うメッセージが数多く届いたそうだが、以前はタイトル獲得の後だったという。羽生は「複雑な心境です」と苦笑していた。

両者に共通するのは「内容の大事さ」

 藤井と羽生の年齢差は31歳9カ月。1994年の名人戦で、羽生棋聖が米長邦雄名人に挑戦したときの年齢差は27歳1カ月だった。両者は王将戦の対局に臨むにあたって、次のように語った。

 藤井「結果そのものより内容が大事だと思います。昨年と違った景色を見られるように頑張りたい。それは、棋譜に表われる指し手だけでなく、自分の読みや考えを含めた景色のことです」

 羽生「年齢差があっても、将棋の世界では同じ土俵で戦えます。まずは対局にうまくなじみ、長年の経験値を生かして戦いたい。内容のあるものを残すことが大事だと思います」

 両者に共通することは、「内容の大事さ」だった。

【次ページ】 師匠の杉本八段は“フルセット”を希望している?

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