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藤井聡太相手に永瀬拓矢が“見たことがない仕掛け”を対局中に…本人は意図を淡々と語る一方で「評価値じゃないんです」高見泰地が驚愕した理由
posted2026/03/18 06:01
王将戦第3局の永瀬拓矢九段。藤井聡太王将にどう挑んでいるのだろうか
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
Keiji Ishikawa
「いまから大丈夫です」
藤井聡太王将が勝利し、対戦成績を2勝3敗に戻した王将戦第5局の夜、私は永瀬拓矢九段に取材依頼のメールを送っていた。
すぐに返信があることが多いが、この日は少し間があった。打ち上げの最中だろうと見当はつくのだが、緊張感が高まってくる。
今までは厚意で取材を受けてくれているが、この先も保証があるわけではない。
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断られるかもしれない。
そう思う予兆はあった。
本局の約1カ月前、私は王座戦二次予選で永瀬の対局を観戦した。終局後にいつものように「お話を聞かせていただけませんか?」とお願いをした。すると永瀬は「王将戦以外のことなら」と笑顔で返してきたのだ。
その時点で王将戦は第3局が終わっており、永瀬は2勝1敗とリードをしていた。まだ途中なので、シリーズに影響が出るような話はしたくなかったのだろう。その日の取材では、対局の話や雑談では盛り上がったが、王将戦には触れなかった。最後に、なぜ王将戦について話したくないのか確認すると、「終わったら話したいことも出てくると思いますが、まだ途中なのであまりお伝えしたいこともないんですよね」という答えだった。
1時間ほど待っただろうか。永瀬から返信がきた。画面には「いまから大丈夫です」と記されていた。一瞬安心したが、またすぐに緊張が襲ってきた。話が盛り上がるだろうか。いや、聞きたいことははっきりしているので大丈夫。そう自分に言い聞かせて電話をかけた。
藤井戦で採用するかは迷ったんですけど
「もしもし」
永瀬の声色はいつもと変わらなかった。
まずは戦型について尋ねる。永瀬は角換わりを志向したが、藤井が8手目に角道を突かずに力戦を志向し、結果的に相雁木になった。藤井が角換わりを避けた格好だが、永瀬はどう思ったのか。
「まあ、一つの可能性としてはあるかなと思ってました」
少し待ったが、続く言葉はなかった。まだシリーズは終わっていない。序盤は再現性があるので、あれこれ喋るとヒントになってしまう可能性を危惧しているのだろう。
次の質問に移る。序盤はどこまで経験があったのだろう。

