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〈春高バレー〉2年連続で決勝フルセット負け…それでも「本当に楽しかった」“鎮西の3番”舛本颯真が「THEエース」と呼ばれる理由
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2023/01/09 11:03
春高バレー決勝で駿台学園に逆転負けを喫した鎮西。2年連続準Vに終わったが、エース舛本颯真(3番)は「楽しかった」と大会を振り返った
一方で、それだけ本数を集めずにもっと分散させればいいのではないか。そもそも決して軽傷ではないケガを負いながらコートに立ち続けることについて、将来のある選手だからこそ、さまざまな意見も飛び交う。高校最後の大会に賭ける思いを鑑みれば立たせてあげたい。だがそのケガが悪化したら将来自体に支障をきたすのではないか。
注目されるからこそぶつけられるさまざまな声もあるのだが、その覚悟を尊重し、準決勝の最終セットで舛本が見せた姿を「多くの人が見るべき」と言うのは、敗れた東山・松永監督だ。
「当然ケガが悪化しないことが一番で、彼の選手生命が一番大切ですが、彼の将来は正直誰も決められない。ここからよくなっていく可能性もあるし、いつか指導者として自分の経験したことをこれからの選手に活かしていくかもしれない。あの舛本君の姿を見て、そもそもこの試合、大会の組み立てそのものを変えたほうがいいのではないかとか、さまざまな発信が生じるきっかけにもなったことは、日本バレー界につながるものでもあるはずです」
見る場所が異なれば捉え方も違い、良し悪しの基準も変わる。確かなことは、舛本が覚悟を持って「エース」として自らを信じ、仲間を信じ、貫き戦い続けたことだ。
76歳畑野監督「頼りになるエースでした」
悔いはない、と言いながらも昨年と同じく2セット先取から敗れた決勝戦を振り返り、何度も「自分の甘さが出た」と言う舛本に、約50年に及ぶ指導者生活で多くの名選手を輩出してきた高校バレーの名将・畑野監督(76歳)は最大限の賛辞を送った。
「ここで決める時は決める。ミスしちゃいけない時はミスをしない。そういう選手だから、エースなんです。(舛本は)頼りになるエースでした」
あるOBが言っていた。鎮西の3番はただのエースナンバーじゃない。チームのために、どんな状況であっても勝負できる選手がつけるべき番号だ、と。
逃げずに挑む。常に全力で。だから敗れてもなお、多くの人を魅了する。
高校バレー界をけん引した“THEエース”は、3年ぶりに会場を埋め尽くした観衆からの多くの拍手に送られ、オレンジコートを後にした。
記録だけでは語れない、鮮烈で色濃い記憶を残して。
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