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〈春高バレー〉2年連続で決勝フルセット負け…それでも「本当に楽しかった」“鎮西の3番”舛本颯真が「THEエース」と呼ばれる理由 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT

posted2023/01/09 11:03

〈春高バレー〉2年連続で決勝フルセット負け…それでも「本当に楽しかった」“鎮西の3番”舛本颯真が「THEエース」と呼ばれる理由<Number Web> photograph by Naoki Morita/AFLO SPORT

春高バレー決勝で駿台学園に逆転負けを喫した鎮西。2年連続準Vに終わったが、エース舛本颯真(3番)は「楽しかった」と大会を振り返った

 野球のエースピッチャーが背負う「1」やサッカーの「10」のように、バレーボールには共通するエースナンバーはない。チームによってエースが背負う番号は異なる。

 例外が鎮西だ。エースで主将、チームの柱となる選手が背負う選手は必ず3番をつける。年代によっては主将がセッターやリベロであることもあるが、長い歴史をたどっても「鎮西の3番」は絶対エースの番号でもある。

 2年時からエースとして活躍してきた舛本が、主将となり3番の継承者となるのも系譜に違わず。だが、主将就任当初の5月に黒鷲旗に出場した際、舛本は葛藤していた。

「プレッシャーも重圧もすごくあります。でも、任されたことはすごく嬉しいしキャプテンができて、鎮西の3番をつけさせてもらえることは幸せで、誇りでもあります。自分なりに、できることを1つ1つやるしかないと思っているんですけど、周りに対してもっと厳しい言葉を言わなきゃいけないと思っていても、なかなかそれができない。自分が言うことで嫌な気持ちになるんじゃないか、仲が悪くなるんじゃないか、とか考えてしまうんですが、言うべきことは言わないといけないし、チームメイト同士が成長しない。本気で日本一を目指すために、もっと自分も、選手同士でも厳しい言葉を言い合えるようになったら成長できるのかな、と思うけど、まだまだ難しいです」

「全員でつなげば、最後は絶対に決めてくれる」

 変わり始めたのは、連覇を目指した昨夏のインターハイで東福岡に敗れ、3位に終わってから。

 このままでは最後に勝つことなどできないと“甘さ”を断ち切るべく、舛本は練習中から厳しい言葉を並べた。その姿に続けとばかりに、チームメイトたちも時にぶつかり合いながら、最後の春高で勝つために見過ごしてはいけないと思うことはその都度言い合った。普段は誰より仲の良い同期だが、「オンとオフの区別がよりつけられるようになった」と振り返るのはリベロの小手川吟之介(3年)だ。

「颯真はインタビューではカッコいいことを言うけど、普段はふざけてばっかりなんです。でもコートに入ると人が変わる。練習中に厳しいことを言うだけじゃなく、試合中も周りを鼓舞してくれて、(春高)準決勝の東山戦も5セット目に入る時『行くぞ』『絶対勝つぞ』と颯真が言って、大事なところでポイントを取ってくれる。本当に心強くて頼もしかったし、だからこそいかに全員で颯真につなぐか。鎮西のディグは上がればOKじゃなく、颯真が打てるところまでつなげられるかどうか。全員でつなげば、最後は絶対に決めてくれる。颯真はずっとそういう存在でした」

 チームを勝たせるために、勝たせるまで打ち続ける。

 最後まで舛本は誰もが描く“エース”の姿をコートで見せ続けた。

【次ページ】 美談で終わらせてはいけない舛本の姿

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