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堀米雄斗を金メダルに導いた“3人のオヤジ”「雄斗は一番飲み込みが悪かった」「若い奴らには物やお金じゃなくチャンスを与えるのが一番」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTomonori Taneda
posted2023/01/07 11:00
スケートボード五輪初代王者の堀米雄斗。1月7日に24歳の誕生日を迎えた
再び亮太の携帯が鳴る。また同僚からだ。
「メダルだよ!」
「え!? 銅メダルでも取ったんですか?」
「違うよ、金メダル!」
自転車を懸命に漕ぎすぎたせいで、息が上がってうまく喜べなかった。「ああ、取ったかあ……」。しばらくしてSNSを見ると、アメリカにいる吉田が集まった友人家族と大喜びしている動画が目に留まった。息子を支え、その夢を後押ししてくれた人たちの笑顔に、亮太は自分の心にも喜びが染み渡っていくのを感じた。
雄斗はこうして金メダリストになった。早川が言う。
「スケートボードを誰よりも好きになったのが雄斗の最大の才能だと思うんです。嫌だなとか、辛いなという時期を乗り越えさせた親父もすごい。楽しくさせるって何より難しい。親が『やれ』と言えば、子どもはやるんです。でも『楽しい』と思えるようにするのはすごく難しい」
亮太はこう感じている。
「自分が好きにさせたとは思ってないんですよ。なっちゃった、って感じなんですよねえ。唯一自分を褒めるなら、バーチカルであらゆる動きに対応できるようにしたこと。基本ができていれば、その後もできることが広がっていく。だから楽しくなったのかな。でもこんなに好きになるとは思わなかった。僕の想像を超えちゃいました」
オリンピックの試合後、珍しく息子からメッセージが届いた。
《色々ありがと》
素っ気ない言葉。だが、それはスケートボードと出会わせてくれたことへの大きな感謝の言葉に違いなかった。
◆初出:Sports Graphic Number1038号『[証言で辿る半生]YUTOを導いた“3人のオヤジ”』(2021年10月21日発売)※年齢など全て掲載時のまま
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。