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羽生善治は藤井聡太20歳の将棋をどう見ている? 「棋譜を見れば伝わってきます」「32歳差ですか。だいぶ離れてはいますけど…」
text by
高川武将Takeyuki Takagawa
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/01/08 11:01
王将戦七番勝負で藤井聡太王将に挑戦する羽生善治九段。藤井聡太五冠の将棋をどう見ているのか、本人に聞いた
「私と中原(誠、十六世名人)先生は約二回り歳が離れていたんですけど、タイトル戦で顔合わせできなかったんですよね。私と藤井さんはどれぐらい違うんだろう? 32歳ですか。だいぶ離れてはいますけど、まあまあ頑張って目指します」
2時間近いインタビューを終えて外に出る。
羽生が見出した「間」
最後に「恐怖心」について聞いた。以前羽生はAI将棋に対して『恐怖心がないというのは本当に強い』と感嘆していた。『恐怖心を無くすのは大変なこと』とも。
――今、負ける恐怖心は少しずつ無くしていますか。それとも持ち続けている?
「勝ちたいという気持ちを強く持ちすぎると、オーバーモチベーションで自分の力が発揮できない。だから、そぎ落とすことが大事です。ただ、負けたくないという気持ちまで無くなると、モチベーションが下がるので意味がないんですよ。本当に何のためにやってるのかわからなくなっちゃう。だから、その『間』が一番いいですね」
――勝ちたいとは強く思わないけど、負けたくない気持ちは持ち続ける。
「そうです、そういうことですね」
にっこり笑うと、羽生は「ではまた」と言って、住宅街の路地をいつものように小走りに去っていった。52歳になっても変わらない風貌、飄々とした話しっぷり、旺盛な好奇心。でも、少し変わったモチベーションと、将棋に見出した微妙な「間」。後ろ姿を見送り、空を見上げると、真夏のような青い空にぽっかり浮かんだ白い雲。
雨過天晴――。そんな言葉が自然と浮かんだ。昨季、棋士人生で初めて沢山負けた羽生が、藤井の持つタイトルに挑戦する日がやってくるのは、そう遠くない気がした。
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