濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
平本蓮「僕の本職はMMA」パッキャオ戦よりもRIZINのベルト…大晦日のボクシングエキシに見た、“悪童”の鮮やかな一撃と格闘技への真面目さ
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/01/01 17:02
2ラウンド終了直前、左フックでダウンを奪う平本蓮
パッキャオとの対戦の可能性は?
大会中、ボクシング世界8階級制覇のマニー・パッキャオが(メイウェザーvs.朝倉戦に続いて)リングに上がる場面もあった。RIZINと契約をかわしたという。もちろんボクシング界のスーパースターがMMAやキックボクシングをやるはずもなく、ボクシングのエキシビションで日本人と対戦したいとのことだ。
当然、平本にもパッキャオについての質問が飛んだ。パッキャオが求める70kg以下という条件にも合うし、何より彼はRIZINでトップクラスのストライカーだ。だが彼の答えは、以下のようなものだった。
「その時(パッキャオがエキシビションをするタイミング)に自分がRIZINのチャンピオンになっていたら。そうじゃなかったら違うなと。何者でもない人間がやるより、そのほうがカッコよくないですか。
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パッキャオとの試合が一番の目標でもないですし。僕の本職はMMAなので。ボクシングは仕事だけど、本当にやりたいのは総合格闘技。いい具合にエンターテインメントができたらとは思ってますけど」
パッキャオと拳を交えることとRIZINのベルト、どちらの“勲章”がほしいかと言えば、間違いなく後者。パッキャオよりもベルト、それが平本のプライオリティだ。世間の耳目を集めることより「本職」を大事にする。当然と言えば当然なのだが、ここにも彼の格闘家としてのスタンスが示されている。
試合後、格闘家・平本の“根っこ”が見えた瞬間
“エンタメ格闘技”と“ガチ路線”についてどう考えるか。そんな質問にはこう答えた。
「エンタメはやるべき立場の人間がやることですね。その立場に選ばれたらやるだけです。でも(格闘技)全部がエンターテインメントだと考えたら(普段の)試合も面白くないと。全部が本気です」
平本は話題の“1分間格闘技”BreakingDown”をツイッターで批判していたが、それは安全面について。エンターテインメントを全否定はしないし、それを言うなら人前で見せる試合はすべてエンターテインメントだと捉えてもいる。
クール、あるいはクレバー。平本蓮は口が悪く態度も悪く、しかし格闘家としての“根っこ”は揺るぎない。インタビュースペースでのコメントを終え、写真撮影タイムに入った平本に「そういえば今日、中指立ててないですね」と声をかけてみた。選手コール時、対戦相手に中指を立てるのが平本のトレードマーク。しかし今回はMMAのオープンフィンガーグローブではなくボクシンググローブだったから、指が出せない。
「あ、確かにそうですね」と平本。微笑を浮かべつつ、カメラに中指の“サービス”をするわけでもない。悪童としての振る舞いは、彼の本質ではないのだろう。そう感じる瞬間だった。
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