そこから2ラウンド終盤に左フックを完璧にヒット。タイミングとしては相打ちだったが、梅野のフックは空を切っていた。平本が距離を支配していたということだ。梅野はダウン。ここでエキシビションが終わった。正確に言うと平本のパンチが当たり、梅野が倒れていく途中でゴング。試合時間終了、規定通り勝敗はつかない。

平本の左フックが梅野を直撃　©RIZIN FF Susumu Nagao

　それでも平本がパンチの強さを見せたと言いたいところだが、誰よりも本人が冷静だった。

「これは仕方ないです」

　梅野は通常、61kgほどで試合をしている。平本は66kg。軽・中量級での5kg差は大きい。ジュニアボクシング全国大会優勝の実績があり、K-1もヒジなしだった平本に対し、梅野は蹴りやヒジ打ち、首相撲を駆使してムエタイで勝ってきた。

「梅野選手、パンチはどうなのかなって映像見たら蹴りとヒジしか使ってなくて（笑）。でもナメないでやろうと」

　その結果が、事実上のKOだった。体格的にもルール適性の面でも、平本が圧倒するのが普通だということだ。そんな中で「ショットチャンスが作れると思ってました」とも。パワーでゴリゴリと相手を削っていくのではなく、鮮やかな一撃を決める瞬間を狙っていた。

ゴングと同時に、倒れ込んだ梅野　©RIZIN FF Susumu Nagao

梅野に感謝も…平本は自分の強さを誇らなかった

　平本は「梅野選手が受けてくれたからできた試合」と感謝の言葉を述べ、自分の強さを誇ることはなかった。そのあたりは謙虚というのか、格闘技に関しての彼の真摯さが表れていたのだろう。その一方で終了間際のダウンについて（同じ状況だった）メイウェザーvs.朝倉未来の「オマージュ」だと笑ったりもしたのだが。

「君（朝倉）もこんなふうだったよって」

　彼のツイッターを見ていると辟易するようなこともある。ただ格闘技に対してはどこまでも真面目であることは疑いようがない。この大晦日も、単に“エキシビション出場で顔見せ”というだけにはしなかった。梅野戦が終わると、その場で次戦を発表したのだ。大会の日付、会場は未発表だが、時期としては2023年春。相手は平本がリクエストした選手の1人、元RIZINフェザー級王者で朝倉と1勝1敗の斎藤裕だ。

「今年はもう過ぎたことなので。来年のほうが楽しみです。来年はRIZINを爆発させます。斎藤選手には最高の試合をしましょうと言いましたけど、負けるつもりはサラサラないので。斎藤選手はトータルで試合をこなす能力がある。だからこそ流れを作りやすいかなと。斎藤選手を倒して、チャンピオンのクレベル（・コイケ）と。クレベルを倒せるのはオレしかいない。朝倉未来？ 僕が先にチャンピオンになって“やらせてください”という状況を作りますよ」

ダウンした梅野に、平本が寄り添う場面も　©RIZIN FF Susumu Nagao

　ベルトを狙う2023年は「一番頑張らなきゃいけない」のだと平本は言った。リングに上がってエキシビションを行なうだけでなく、MMAについてのビジョンをファンに見せるところまでが彼の大晦日だったのだ。同時に発表されたのは同階級の朝倉未来vs.牛久絢太郎。榊原CEOによると、2023年にはフェザー級のGPトーナメントが開催される可能性もあるという。

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