過熱報道にイチロー沈黙＆優勝予想ほぼゼロも…最強西武に15連勝“1995年のオリックス”はなぜ勝てた？「願いの力って、すごいんですよ」

　観衆の目の9割9分が、常に背番号「51」を追っている。'95年のグリーンスタジアム神戸の雰囲気は、まさにそんな感じだった。

　ポジションにつくところ。内野ゴロで一塁を駆け抜けるところ。フライを捕るところ。イチローはそのすべてが絵になった。

　長年にわたってイチローを撮り続けたフリーカメラマンの松村真行は、イチローのスローイングの姿に魅せられたという。

「バックホームのとき、ゆったりと大きく投げるので、投げ終わった後の姿勢がとてもきれいなんです」

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　利き腕は地面に向かって真っ直ぐに振り下ろされ、グラブをはめた左手は鳥が翼を広げたかのように後方に大きく伸び、両足は小さく宙に浮いていた。これまで見たことのないような美しいフォロースルーだった。

キャンプイン2週間前、1月17日に。

　今にして思えば、あの時代、あの瞬間に、イチローが世に出たのは運命だったのではあるまいか。

　イチローが史上初のシーズン200安打を達成し、「イチローフィーバー」を巻き起こしたのは入団3年目、'94年のことだった。

　そして年が明け、'95年のキャンプインを迎える約2週間前、イチローを含む神戸の人々の生活を一変させる出来事が起きた。

　阪神・淡路大震災である。

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