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宇野昌磨「あまり嬉しく思えない」の真意とは…フィギュア世界選手権の選考基準をめぐる舞台裏「男子3人はどうやって選ばれたのか?」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAFLO
posted2022/12/28 17:03
フィギュア世界選手権代表会見で、宇野昌磨は選考基準について疑問を呈した
「それぞれの選手やコーチとは今後、話し合いもしたいと思います。日本が五輪で再び成績を残すため、ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けての第一歩をこの形で動かそうと決まりました。選手権大会に選ばれなかった選手は、2月3月の(他の)国際大会にも派遣し、ステップを踏めるようサポートしていきたい」
宇野はなぜ、あえて「嬉しくない」と発言したのか?
では一方で、宇野があえて会見の場で「嬉しくない」と発言したのはなぜか。改めて振り返ると真意が見えてくる。
今回の全日本選手権で、男子は激戦が予想されていた。宇野は頭1つ抜けているものの、五輪代表の鍵山は怪我明けで、GPファイナルに出場した山本、三浦、佐藤がわずかにリード、友野、島田は全日本選手権での逆転に懸けていた。
それぞれに重圧がかかるなか、男子はミスの多い試合展開だった。ショートでは、2本の4回転を入れて、転倒やパンクのなかった島田が2位発進。僅差に、山本、友野がつけた。
フリーは、ショートで13位と出遅れた三浦が、4回転2本を成功させて242.55点まで追い上げる。鍵山はリハビリの遅れもあり、237.83点に沈んだ。ショート5位の佐藤が、4回転ルッツは転倒するも、4回転トウループ2本を決め、249.64点で暫定首位に。ショート4位の友野が粘りを見せて、250.84点で首位を奪う。山本は4本のミスが出て、友野、佐藤の次点になった。
島田高志郎の演技後、ランビエルコーチは満面の笑み
ここで宇野にとって、ランビエルコーチの同門である島田が登場する。冒頭の4回転サルコウは手をついたものの、4回転トウループや2本のトリプルアクセルを次々と決めていった。最終滑走の宇野は、この演技をリンクサイドから見守っていた。
「直前に滑った高志郎君は、(スイスの)シャンペリーで団結感を持って練習してきた時期もありますし、スケーターとして応援する気持ちもありました。高志郎くんが1つ1つのジャンプを跳べる度に自分のことのように嬉しかったです」
島田は総合252.56点で、その時点で首位。得点が出た瞬間、宇野をこれから送り出すランビエルコーチまで、満面の笑みになった。