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「曲から遅れるのは覚悟でした」全日本王者・宇野昌磨が打ち明けた驚きの計画「自信をつける、つけないという所にもう僕はいない」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/12/27 17:18
全日本フィギュア選手権、圧巻の演技で優勝を果たした宇野昌磨
本番のための練習、練習のための本番
「試合なので練習してきたことが出来ないこともあるので焦りはありませんでした。むしろ、前半で失敗したぶん、後半で、いつも出来ないことをやりたいな、と思いました」
いつも出来ないこと。それは何と「トリプルアクセル(3A)+ダブルアクセル(2A)+ダブルアクセル(2A)」の3連続ジャンプだった。かねてから「本番のための練習、練習のための本番」と言ってきた宇野だが、まさに「練習のための本番」と考えたのだ。
「実は、会場入りする前日に、3連続ジャンプって『3A+オイラー+3回転フリップ』じゃなくてもいいじゃんって、気づいたんです。『3A+2A+2A』なら簡単に跳べるジャンプなので頭に入れていました」
演技後半、4回転トウループ2本を降りたあと、一番最後のジャンプで『3A+2A+2A』を成功。しかし2Aを2つ跳んだことで、いつもより時間を使ってしまった。そのまま滑っていくと、タイムオーバーで「減点1」となるのは明白だった。
「曲から遅れるのは覚悟でした。点数を追求したときに、2Aをもう1個(多く)つけた方が、点数は伸びます」
演技後半でのダブルアクセルの基礎点は「3.63点」。タイムオーバーで「ー1点」となっても、得点は上がる。しかし敢えて曲から遅れてでも得点にこだわるのは、宇野としては珍しいことだ。すると、さらなる計画を打ち明けた。
「今後、4回転を1つ増やすとなった時に、トリプルアクセル2本をくっつける以外に方法がないんです。なので、新しい4回転をやる前に、セカンド(後半)にトリプルアクセルをつけるのが僕の課題になる。先を見据えた時に必要になるので、(まずはアクセル3連続を)練習したいと思いました」
「4回転6本」という壮大な計画
男子のフリーでは、ジャンプを7本入れる。つまり新たに4回転ルッツを習得すると「4回転を5種類6本」入れる構成になるため、残る1本を「3A+3A」にするというのだ。その手始めとしての「3A+2A+2A」だったことを打ち明けた。
「今の(4回転5本の)構成は、本番では失敗がありましたが、普段の練習では自分のなかで普通になってきています。なので、また一歩、難易度を上げた構成を考えていきたいと思っています。次(の世界選手権)はまだだいぶ先なので、色々試していきたいです」
4回転ルッツの習得も、4回転6本の構成も、壮大な計画のように感じられる。しかしランビエルコーチは、すでにその段階に近づいていると、自信をみせた。