濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“傾奇者”にタブーなし…スターダムで活躍したウナギ・サヤカは、なぜ“女子プロレス界に喧嘩を売りまくる”のか?「今ある枠なんてクソみたい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/12/27 17:03
今年10月からさまざまな団体のリングに上がり話題を集めるウナギ・サヤカ
ウナギの信念「プロレスは戦闘力だけじゃない」
2021年7月の後楽園大会。メインで勝利した橋本は、満員にならなかった客席を見て悔し泣きしている。
「プロレスのことだけを考えられる環境なのに、自分がメインではそれに伴った集客ができていない。強いだけでは女子プロレス界のトップになれない……」
橋本の涙、その延長線上に自分の仙女参戦があるのだとウナギは言う。“強さ”を比較したら橋本とウナギでは比較にならない。しかしプロレスラーとしてのトータルの“実力”でなら勝負になる。だからこそ、団体もウナギの参戦を認めたし、橋本も対戦を了承したのではないか。
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「今の女子プロレス、完全にスターダム一強じゃないですか。スターダムは後楽園大会が当たり前。他の団体は後楽園が年に何回かの目標になって。それに対して、みんな諦めてないですかと言いたいんですよ。親会社が大きいとか(スターダムは上場企業ブシロード傘下)、コロナ禍だからとか、そんな言い訳は終わりにしようよって。
みんな言うじゃないですか。“この経験を積まないとベルトに挑戦できない”とか“私にはまだ無理”とか。そんなのやってみないと分からない。私は今タイトルマッチやれって言われたらやりますよ。プロレスは戦闘力だけじゃない。勝敗だって戦闘力だけでは決まらない。実績とかそんなに大事ですかね? 本人同士がやりたければいいし、なんなら片思いでも私は試合にもっていきますよ(笑)。試合が決まっちゃえばこっちのもの。努力が報われるとは思わないけど主張せずにかなうものなんてないんですよ。必要以上にしつこく言わないと」
スターダム移籍の時も、風当たりは強かった
自分がやりたいことを諦める言い訳を、この世の中から消し去りたい。誰が何をやったっていいしチャレンジするのに早いも遅いもない。その思いがウナギの原動力だ。
やりたいことをやるためなら、誰に何を言われても、叩かれても関係ない。そもそもずっと嗤われてきたし叩かれてきた。デビューした東京女子プロレスでは主に“楽しい”プロレスをやってきた。キャリアも浅い。そこからスターダムに移籍して、しばらくは風当たりが強かった。リング上からこう叫んだこともある。
「なんでスターダムに来たんだとかお前なんかいらないとかお荷物とか言われてますけど、だからどうした!」
今やっているのも、結局は同じことなのだろう。お前には無理だと何度言われても、聞く耳を持つ気などない。そうやってスターダムのファンにも認められてきた。
さまざまな団体に上がっていくうちに、いずれファンも慣れてきて埋もれたり飽きられたりする時もくるのか。それはウナギ自身も最初に考えたそうだ。