濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“傾奇者”にタブーなし…スターダムで活躍したウナギ・サヤカは、なぜ“女子プロレス界に喧嘩を売りまくる”のか?「今ある枠なんてクソみたい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/12/27 17:03
今年10月からさまざまな団体のリングに上がり話題を集めるウナギ・サヤカ
長与千種がウナギに耳打ちした言葉
マーベラス創設者の長与千種も最初からのターゲットだ。トーナメントの記者会見では「優勝してチャンピオンになって、挑戦者に長与千種を指名する」と言い放った。
トーナメント1回戦の相手である渡辺智子は、ウナギのことを「嫌いじゃない」と語った。1989年デビューの大ベテランから見ると、生意気で主張が強いくらいでちょうどいいのかもしれない。長与もウナギの存在を意識していて、マーベラス初登場時にはリングインするところで耳打ち。
「お前の望むものは、そう簡単には渡さないよ」
そんな言葉だったそうだ。長与はツイッターで「こいつのすげ~ところってプロ意識」とウナギを賞賛。「自分の役割ってもんをわかってるからレジェンズに好かれるんだろうなぁ」と評価している。「試合はイマイチ下手だがね」とも書いているが、それはイコール伸びしろだと見ている。練習では身につかないものを持っている、という解釈もできるツイートだった。
完敗しても、ウナギがへこたれない理由
そんなウナギを「練習が足りない」と一刀両断にしたのが仙女の橋本千紘だ。ウナギの仙女初戦はタッグマッチのはずだったがパートナーを連れてこなかった。結果、橋本と優宇の元タッグ王者組に1vs.2のハンディキャップ戦を挑む。当然、玉砕に終わった。
2戦目は橋本の要求でウナギ&岡優里佳vs.橋本1人のハンデ戦。ここでも橋本が圧倒してみせる。特に序盤、テイクダウンとグラウンドは橋本が実力差を見せつけるような展開になった。倒され、抑え込まれ、関節を固められてウナギは呻き声を上げるしかない。最後はダウンした岡の上にウナギをパワーボムで叩きつけ、橋本の勝利。ひたすら橋本の強さが目立った。
驚いたのは、それでもウナギが橋本にシングルマッチを要求したことだ。流れとしてはメチャクチャである。そのメチャクチャを、橋本も受け入れた。ウナギは仙女で1勝もしていないのに、団体トップとの一騎打ちにこぎつけてしまった。
「してやったりでしょう」と試合後のウナギ。そのシングルでも敗れ、仙女では3連敗。それでもウナギはまったくへこたれることがない。なぜなら、一つ確信していることがあるからだ。
「私は橋本千紘が持っていないものを持っている」
橋本は入団前にレスリングで活躍。“強さ”を最大のアイデンティティとする選手だ。しかしウナギは、それだけがプロレスではないと考えている。
「私、去年の夏に橋本千紘が流した涙を忘れてないですよ」