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田原成貴「トウカイテイオーが一番強かった」「マヤノトップガンは振れ幅が…」有馬記念3勝の元祖天才が語る“難コースの攻略法”とは
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byTomohiko Hayashi
posted2022/12/24 17:02
1993年の有馬記念、1年ぶりのレースで奇跡の復活勝利を果たしたトウカイテイオー。鞍上の田原成貴氏も涙を抑えることができなかった
「トップガンは120を出したかと思えばすぐ70に…」
1995年のマヤノトップガンは前走の菊花賞でGI初制覇を遂げており、この有馬記念は鮮やかな逃げ切り勝ちだった(翌1996年は7着)。
「菊花賞、有馬記念と連勝したけど、それほど強いと感じさせないまま勝ってしまったんです。菊花賞は伸び切ったように見えて、最後ちょっと止まっていたし、有馬記念もビュッと切れる馬がいなかったから勝てたというところがあった。とにかく、ポテンシャルを発揮しにくい馬でしたね。全盛期のナリタブライアンが90から100くらいの小さな振れ幅で能力を出せたとしたら、トップガンは120出したかと思えばすぐ70になってしまった。騎手がどう乗っても、流れだとか、いろいろな要素によって振れ幅が大きくなってしまうんです」
そんなマヤノトップガンがポテンシャルを最大限に発揮したのは、横山典弘・サクラローレル、武豊・マーベラスサンデーといった強豪を、直線で豪快に差し切った1997年の天皇賞・春だった。そのレースのひとつのポイントは、道中は中団に控えていたサクラローレルが3コーナーで2番手、マーベラスサンデーが3番手に進出したのに対し、マヤノトップガンは動かずにいたことだ。
「サクラとマーベラスが互いに意識して前でやり合わなかったとしても、あのときのトップガンなら差し切っていたと思う。ただ、あの2頭が前に行ったことによって、楽にはなったよね。もしあそこで2頭について行っていたら、サクラに勝たれて、おれは2着だわ。いや、3着だったかもしれない」
内枠も外枠も難しい中山芝2500m
有馬記念に話を戻そう。「魔物が棲む」とも言われる中山芝2500mのコースを、田原氏はどうとらえているのか。
「ある程度の頭数が出てくると、あまり嬉しくないコースですね。新潟の直線競馬にしても内と外ではアンフェアな部分が出てくるわけだけど、騎手としては与えられた条件のなかでやるしかない。でも、特に強い馬に乗ったとき、中山の2500mと府中の2400mのどっちがいいかと騎手に聞いたら、みんな府中って言いますよ。中山の2500mは、スタートから外枠が不利だけど、外を引いたら、内を見ながら競馬をするしかない。間違いないのは、ミスをしやすく、不可抗力で何かに巻き込まれやすいコースだということ。内枠を引いたら引いたで、外から何重にも他馬が入ってくることもあるし」