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野球クロスロードBACK NUMBER
「引退か、退団か」前ソフトバンク・松田宣浩が明かす“戦力外通告からの2週間”…涙のセレモニーの“台本になかった演出”とは
posted2022/12/26 11:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Keiji Ishikawa
戦力外後の日々…松田が考えていたこと
車を走らせる。
目的地まではおよそ1時間。短くなく、長いわけでもない。運転中に何かを考えるにはちょうどいい時間なのかもしれない。
福岡市内の自宅からタマホームスタジアム筑後のある二軍施設までの間、ソフトバンクの松田宣浩は「有意義やった」とハンドルを握っていた空間での自分を振り返る。
「基本はその日のこと、試合だったり、練習のことを考えてましたね。『ホークスでプレーできるのも、もう少しなんやな』って思いながら運転することもありましたけど、気持ちとしては楽でした。辞めることは想像してなかったんで。そこを少しでも考えていたら、道中もきつかったと思うんですよ。僕はもう、『自分を獲ってくれるところがあれば頑張りたいな』って、それだけだったんでね」
松田が筑後に通うようになったのは、まだ残暑が色濃く残る季節だった。
9月7日。球団に呼び出された松田は、2023年に契約を結ばないことを告げられた。つまり、戦力外を受けたのである。
薄々はわかっていた。もしかしたら単年で契約してくれるかもしれないといった期待もあったが、現実は厳しかった。
「『そうなんだ』って、そんな感じですね。別にショックってこともなかったです」
若返るチーム…「世代交代は自然の流れ」
今年は巻き返しを誓ったシーズンだった。
18年から2年連続で30ホームランを記録していた打棒が、20年からの2年間は10本台にまで激減していた。しかし、昨年のシーズン終盤に松田本来の、体の前でボールをしっかり捉えるバッティングを取り戻しつつあったし、実際に今年の開幕戦は「7番・サード」でスタメン出場を果たしていた。
「もうひと花咲かす。まだまだ悪あがき、していきますからね!」
生気を放出してシーズンに臨みながらも、39歳という自分の年齢を客観視すれば、結果が問われることも理解していた。