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吉田、千賀、藤浪へ…日本人のメジャー挑戦に必要な「覚悟」とは? 思い出した、キャンプイン前から現地で準備していた“イチローの姿”
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/21 17:07
レッドソックスの入団会見で笑顔を見せた吉田正尚
「P-1」は国際的レベルのスポーツ競技で、個人あるいはチームの一員として特定の競技に出場する場合に必要なビザで芸能人もこのビザを取ることがある。ビザ申請は正式契約後に可能となり、発給までには最低でも2週間ほどを要する。ドナルド・トランプ前大統領時代は米国のエンターテインメントを支える「P-1」と言えど取得までには1カ月以上を要していた不遇のときもあった。
また、21年シーズン前の数年間は冬の移籍市場の動きが極端に遅く、契約が2月になるようなことも多かった。ビザがなければ渡米できないという固定観念も手伝い時期は遅くなった。だが、ビザは報酬を得るための活動に必要なものであり、キャンプイン前の自主トレ段階は関係ない。さらにはメジャーリーガーの給料が支払われるのはシーズンが始まってからなので、ミールマネー(日当)を受けとらなければキャンプ、オープン戦にも参加できる。ビザがないから渡米できないというのは、準備段階では的外れと言える。
準備に一番時間をかけていたのは、イチローだった
一昔前の話になるが、01年にマリナーズに入団したイチローさん、03年・ヤンキースの松井秀喜氏、07年・レッドソックスの松坂大輔氏らは、キャンプインの遥か前に米国入りし現地でトレーニングを積んだ。今回の吉田、千賀同様にイチローさんと松坂氏は年内に契約を済ませ、松井氏も年明け早々にサインを済ませた。1年目であるが故にキャンプイン前から現地で準備を整えたい。そんな思いが彼らの心を支配していた。
この準備期間で一番長い時間を割いたのはイチローさんだった。キャンプインの1カ月ほど前には米国入りし、ボールを打ち、投げ、フィールドを走った。いち早く現地で生活することも適応のひとつだった。
今はファンの方も日米の野球環境の違いをよく知る時代となった。「ボールが滑る」、「マウンドが高く固い」、「投手の球速が日本より5キロ以上速い」、「投手のフォームの間合いが短い」などなど。メジャー公式球で日本で練習しても、環境が違っては効果も半減だ。フリー打撃も至近距離から投げてくる米国流ではタイミングの取り方もまるで違う。『郷に入っては郷に従え』ではないが、現地の環境で練習しなければ、感じられないことは多い。1年生選手にとっては、キャンプイン前に片付けなければいけない重要な課題だ。