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ドラフト1位公表“1時間前の知らせ”に「まさか」…楽天・荘司康誠が語る“リーグ戦わずか2勝”の立教大時代「学生コーチ転向も考えていた」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/21 17:31
ドラフト1位指名を受けた楽天に入団する荘司康誠。右は沖原佳典スカウト
ドラ1事前公表の1時間前に…
吉報は突然、訪れた。
10月18日の夜。ドラフト会議まで2日を切ったこのタイミングで、楽天が自分をドラフト1位で指名するのだと、大学側から知らされた。それは情報が公になる1時間前だというから、荘司に気持ちの整理がつかないのも当然である。
「まさかの公表だったんで……(笑)。しかも、楽天からは指名されないもんだと勝手に思っていたんで、なおさらびっくりしました」
とりあえず、両親にそのことを報告し、次にトレーナーの北川に連絡した。
「泣きそうだよ」
恩人はそう言って喜んでくれた。目標の実現に、さらに胸が躍る。その夜、荘司はなかなか眠ることができなかった。
ドラフト会議当日は、安心して指名を待てるはずだったが、楽天より先にロッテから名前を呼ばれた。勝手にバツの悪さを感じているなか、抽選で楽天が自分のクジを引き当て、今度は本当に安心できた。
リーグ戦通算わずか2勝。
成績だけでは語ることのできない、荘司のポテンシャルの高さと伸びしろ、なにより歩みが結実した瞬間だった。
「でっかいことを言ってもしょうがない」
2年前までは想像できなかった姿が、そこにある。ドラフト1位でプロとなり、初めて楽天のユニフォームに袖を通しても、まだ「なんか、プロ野球選手っぽいな」と他人事のように見てしまう自分がいる。
傍流から本流に辿り着いた荘司は、プロのピッチャーとして新たな流れに乗る。
「1年目は先発で100イニング投げられれば上出来かなって思っていて。あんまりでっかいことを言ってもしょうがないんで、1、2年先を見据えて、できることをひとつずつ確かめながら、しっかりやれればいいかなって」
野球選手としての安定した暮らし。圧倒的なパフォーマンスを引き出すトレーニング。目指すべきものは多い。だが、それらを実現できると信じる心が一番なのだと、自分に言い聞かせる。
信は力なり。
言霊が、いつも荘司の支えとなる。
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