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「不運です」三浦佳生17歳が初のGPファイナルを一言で…すべてはトリノのバーガーキングから始まっていた?「今に覚えとけよって気持ち」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2022/12/17 11:03
初のGPファイナル進出を果たした三浦佳生(17歳)。総合5位に終わるも次回への雪辱を誓った
グラッスルは大声援を受けて、意地を見せた。冒頭の4回転ルッツが決まると、観客は足を踏み鳴らして大きな音を出す。拍手と大声だけでは物足りない、といった様子だ。さらに4回転フリップ、ループも決まると、イタリアの青年が険しい頂きを登っていく姿を、ファンも全力で応援した。
観客の大歓声に「もう、なにコレ!って」
すべてのジャンプを着氷する好演技。実際には、不正確なエッジや、回転不足などもあったのだが、観客にとっては「ノーミス」だ。歓声、拍手、鳴り物、足踏みーー会場は、ありとあらゆる「音」を出す。そして三浦の滑走順となった。
「前の2選手も大歓声でしたけど、ボルテージマックスで盛り上がってて。もう『なにコレ!』って。(コーチの声も)何も聞こえん!って状態。イタリアの選手の次に滑りたくないって思いました」
17歳の三浦にとって、ここまで盛り上がる国際大会は初めてのこと。コロナ禍の3年間を通し、日本での試合は、無観客または、「声援はNGで、拍手のみ」の応援が続いている。
「最近の日本だと、拍手とスタンディングオベーション、あと若干のザワザワ、だったんですけど。数年前の会場の雰囲気を思い出しました」
その時、三浦の頭に浮かんだのは、2018年関東ジュニア選手権。佐藤と鍵山優真との3者対決と言われた大会で、鍵山と佐藤のあと、三浦が最終滑走となった試合だった。
「ショートで優真が1位、駿が2位、僕が3位。でも抽選で僕が最後の滑走順になったんです。駿が140点台を出してワーッてなって、そのあと僕は完全に空気に飲まれて、フリーで90点台(笑)。さんざんでした」
三浦とは対照的だった、山本、宇野の演技
演技前から、心ここにあらず、となった三浦。冒頭の4回転ループが3回転になり、演技後半の4回転2本もミスをしてしまう。演技を終え、うつむいたまま動けなかった。
「いやあもう、何もかも駄目です。集中出来ていませんでしたし、ステップなんか素人目でも分かるくらい脚が震えてて。全然自分が跳びたいジャンプではなかったです。演技も表現も何も残せませんでした」
三浦のあと、山本はパーフェクトの演技で銀メダルを手にすると、こう話した。
「以前は他の選手の演技はシャットアウトしていたんですが、今季は、皆がベストを出そうとする姿を見て、パワーが湧いてきます。競技者として、そういう思考はすごく成長したところ。今回も、素晴らしい演技が続くなかで、僕も頑張ろうって思い、楽しさがこみあげてきました」
多くの経験を経てこの地に立った、22歳らしい心意気だった。
さらに宇野も5本の4回転を降り、総合300点超えのハイスコアで初のGPファイナル王者となった。宇野は言う。