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三原舞依の振付師が語る「マイはスイートだけどとても強い」 闘病から復帰まで…GPファイナル制覇の演技に込められた思い《独占インタビュー》
posted2022/12/20 17:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
今日のリンクには何か魔物でも取りついたのか。そんな思いがよぎるほど、選手全員が不調という試合がごくたまにある。
2022年トリノGPファイナル、女子フリーがまさにそうだった。第一滑走だった韓国のキム・イェリムから最終滑走だった坂本花織まで、ジャンプミスが続出していた。今季のGPシリーズ2試合の成績上位6人が進出したこの大会で、誰もノーミスで滑り切った選手はいなかった。
そんな中でSP、フリーを通して最も安定した演技を見せ、唯一200点超えをして初優勝を手にしたのは、23歳の三原舞依だった。
「結果にはとても驚いています。今でも信じられません。ここで滑ることができてとても幸せです。お客さんに感謝しているし、コーチや家族、ファンにも感謝しています」
優勝会見の冒頭で、三原はそう英語でコメントした。
シニアGPシリーズに上がって7シーズン目。初進出の、初優勝である。実力はありながらも、惜しいところで表彰台を逃すことが多かった三原の、悲願の勝利だった。
SPはノーミスで滑り切り、フリーは最後のループが2回転になって手をついたのが唯一の大きなミスだった。実はこの時点で、足に違和感があったのだという。
「今日の演技としては、ちょっとコンディションを整えることがハードだった。その中でよく最後まで滑り切れたなと今日は思っています」
“人生を表現”したショートプログラム
今季のショートプログラム「戦場のメリークリスマス」は、三原の人生を表現したものなのだという。長年彼女のプログラムを振付してきたカナダの振付師、デイビッド・ウイルソンからの提案だった。
「初めて聞いた時は、すごいなーって思って……」と三原。
「今まで物語の主人公を演じたり、自分の姿を重ねてっていうのはあったんですけど、その曲に対して『マイの人生を』って言っていただけたのは初めてで、本当に全てを知って下さっている方なので、そういう言葉をいただけたときはすごく嬉しくて……」。大会翌日、そう語った三原。若年性関節炎を患い、闘病で大きなブランクを経て氷の上に復帰した彼女にとって、特別な思いをこめた作品だった。