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井上尚弥が挑む4団体統一戦の“歴史的な価値”とは? バトラーにKO勝ちなら史上初の快挙達成、「1.01倍」の確勝級オッズも 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2022/12/12 17:02

井上尚弥が挑む4団体統一戦の“歴史的な価値”とは? バトラーにKO勝ちなら史上初の快挙達成、「1.01倍」の確勝級オッズも<Number Web> photograph by KYODO

12月10日の会見で握手を交わす井上尚弥とポール・バトラー。12日の前日計量もそれぞれクリアし、いよいよ決戦を待つのみとなった

井上尚弥は「ここが自分のゴールではない」

 バトラーとしては序盤KO勝利の多い井上に対し、まずは無事に1、2回を乗り切りたいところだ。そして動き回り、手数を出して何とか井上に食らいつき、「あれっ?」というムードを作り出したい。「井上はディフェンスに弱点がある。そこを突いていきたい」と語ったのはギャラガー氏。バトラー本人は海外メディアに「6ラウンドを過ぎれば」と後半勝負の可能性を示す。誇り高きイギリスの王者は本気でモンスターを攻略しようとトレーニングを積んできたのだ。

 しかし、バトラー側が描くシナリオを井上が許すかといえば、やはり「許さない」に一票を投じざるを得ない。井上が「今回の試合は簡単にいかない」と話していて、あっという間に相手をのしてしまった試合はいくつもあった。バトラーの出方次第ではモンスターのパンチが初回から火を噴く可能性も大いにある。

 井上がバンタム級で6ラウンド以上戦ったのは8試合中3試合。1つは井上が眼窩底骨折してフルラウンド戦ったノニト・ドネア第1戦であり、ジェーソン・モロニー(豪)は7ラウンドで、アラン・ディパエン(タイ)は8ラウンドでフィニッシュした。バトラーは無事に前半戦を乗り切っても、やはり倒される危険性が高いのだ。

 有利を伝えられるチャンピオンの気持ちが緩んだり、逆に気持ちを引き締めようとオーバーワークになったり、ベストコンディションを作れない例が過去にある。他に死角があるとすれば気負いだが、私たちは井上が「勝って当たり前の試合」を当たり前に勝ち続けてきた姿を何度も見てきた。この「スキのなさ」こそが、井上の最大の武器ではないだろうか。

「ここが自分のゴールではない。この試合はバンタム級の最終章という位置付けであり、スーパーバンタム級で戦う上でのスタートになる。危なげなくしっかりと圧倒するパフォーマンスで勝ちたいと思います」

 4団体統一に成功すれば来年はスーパーバンタム級にクラスを上げるのが規定路線。井上は今回の試合で早くも1階級上の猛者たちを震え上がらせようとしているのだ。心身ともにマックスの井上がいったいどんなパフォーマンスを披露するのか。歴史的瞬間は間もなく訪れる。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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