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井上尚弥が挑む4団体統一戦の“歴史的な価値”とは? バトラーにKO勝ちなら史上初の快挙達成、「1.01倍」の確勝級オッズも
posted2022/12/12 17:02
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
KYODO
WBA&WBC&IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(大橋)が12月13日、有明アリーナでWBO同級王者のポール・バトラー(英)との4団体統一戦に臨む。4団体統一戦は日本選手初、アジア選手初、そしてバンタム級の歴史においても初めてだ。この試合の意味、勝負の行方、そして日本が世界に誇るモンスターの今後まで占ってみたい。
大橋会長の証言「1.5倍は強くなった」
世界チャンピオンが4人もいるなんておかしいじゃないか――。多くの人が抱くであろう素朴な疑問を解消し、自らも堂々と真のチャンピオンと名乗りたい。そんな思いから4団体統一を目標に掲げた井上が、ついに念願の檜舞台にたどりついた。
これまで4団体統一、いわゆる“比類なきチャンピオン”の称号を手にした男性ボクサーは、2004年にミドル級を制したバーナード・ホプキンス(米)を皮切りに歴史上8人。井上は9人目の快挙に王手をかけているのだ。
この中で4つのベルトを一つずつ獲得したのはレジェンドのホプキンス、現役ナンバーワンボクサーであるスーパーミドル級、サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)の2人だけ。ただし、この2人の戴冠には王座決定戦が含まれ、もし井上がバトラーにKOで勝てば、4団体すべての王者からKOでベルトを奪った唯一の“比類なきチャンピオン”ということになる。まさに快挙の中の快挙と言えるだろう。
そんな歴史的な一戦に向け、井上は心身ともに最高の状態を作り上げたようだ。土台となったのが9月中旬に行った10日間ほどの米ロサンゼルス合宿。出げいこが10年ぶりだったという井上は「向こうの選手、トレーナー、関係者が見ている中でスパーリングできたことは刺激になった。いつものジムでやるのと比べてメンタルトレーニングにもなった」と環境の変化が大きな刺激になったと説明した。
大橋秀行会長は「アメリカ合宿、そのあとの走り込み合宿を終えて1.5倍は強くなった」とモンスターのさらなる成長を証言する。もともと非の打ち所のない井上がさらにパワーアップしたとすれば、まさに怪物以外の何ものでもないだろう。