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「素人の喧嘩じゃない、これが格闘技だ」平本蓮はカオスな格闘技界の救世主か、それとも…W杯日本戦でも炎上上等の「クロアチア応援です」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2022/12/12 11:01
元DEEP王者の弥益ドミネーター聡志を破り、「これからは平本蓮の時代です」と宣言。SNSでの“平本劇場”にも拍車がかかっている
そうしたカオスというべき時代に、MMAファイターとしての平本蓮は出現した。タトゥーがトレードマークのメシア(救世主)なのか、それとも単なるお騒がせ屋なのかは、まだわからない。いや、最終的にはUFCを目指す当人にとって、周りからどう見られようと知ったことではないだろう。
格闘家として成長する“もうひとりの平本蓮”
しかしながら、平本の価値観の中で格闘技とそれ以外の明確な線引きはあるようだ。それを証明するかのように、ドミネーター戦後、彼はこんなツイートをしている。
「平本蓮強くなってるでしょ(中略)素人の喧嘩じゃない、これが格闘技だ」
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格闘技専門誌では自分の試合について事細かに分析している。筆者も、ドミネーター戦で見せた、組みたい相手にほとんど組ませずに試合を進める技術には脱帽するしかなかった。少なくともストライカー(打撃系格闘家)の闘い方としては理想形ではないのか。
アメリカの出稽古先のひとつであるルーファスポーツではその打撃力を高く評価され、現Bellator世界バンタム級王者セルジオ・ペティスが堀口恭司とBellator世界バンタム級王座をかけ対戦した際には、ペティスのセコンドを務めた。北米MMA主要プロモーションの王者が認めるほどのテクニックを、平本は有しているのだ。
K-1時代、日本人選手として初めてゲーオ・ウィラサクレックからKO勝ちを収めたキックのスキルをMMAでも活かせるようになったら……。あるいは剛毅會空手で得た空手のエッセンスをもっと活かせるようになったら……。組み技や寝技の上達とともに、そこにはSNSや会見で激しくやり合う平本とは別の“もうひとりの平本蓮”がいる。
2023年は朝倉未来や鈴木千裕との対戦が期待されている。実現すれば朝倉とは待望の初対決となり、鈴木とは再戦となる。いずれも楽しみな組み合わせだ。とくに朝倉とは、格闘技に対する価値観に大きな隔たりが感じられるため、実現すれば大いに盛り上がるだろう。夢の一騎討ちが正式にアナウンスされても、平本はこれまでと変わることなく過激なトラッシュトークを続けながら、格闘家としての価値観だけは崩すことなく突き進むのだろうか。