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「藤井(聡太)さんとのタイトル戦が実現できて…」羽生善治九段が“100期挑戦” 王将戦に見る天才伝説、52歳の自然体な将棋と生活

posted2022/11/28 11:01

 
「藤井(聡太)さんとのタイトル戦が実現できて…」羽生善治九段が“100期挑戦” 王将戦に見る天才伝説、52歳の自然体な将棋と生活<Number Web> photograph by JIJI PRESS

王将戦、藤井聡太五冠への挑戦が決まった羽生善治九段

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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 第72期ALSOK杯王将戦の挑戦者決定リーグ戦は、11月22日に最終戦が行われた。5連勝している羽生善治九段(52)は、4勝1敗の豊島将之九段(32)に勝って全勝し、藤井聡太王将(20=竜王・王位・叡王・棋聖を含めて五冠)への挑戦者になった。

 意外な展開となった羽生-豊島戦、初めて実現した藤井-羽生戦のタイトル戦、羽生のタイトル獲得100期の可能性、羽生と王将戦との濃厚な関連、羽生の近況などについて、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】

▲6二金の王手をかけた時、羽生の指が震えた

 羽生九段は10月31日、王将戦リーグで永瀬拓矢王座との激闘を制して5連勝した。その時点で豊島九段は2勝1敗だったが、11月11日に服部慎一郎五段、15日に渡辺明名人に勝ち、22日の最終戦で羽生九段と対戦した。羽生が勝てば挑戦権を得る。豊島が勝てば羽生と同成績で並び、24日に両者のプレーオフが行われる。

 羽生と豊島の対戦成績は、本局までに豊島が26勝19敗と勝ち越していて、直近10局では豊島の9勝1敗だった。

 羽生と豊島の対局は11月22日に東京の将棋会館で行われた。戦型はプロ棋界で流行している角換わり。先手番の羽生は25手目に▲3五歩と突いて早くも仕掛けた。その後、昼食休憩明けの13時30分頃に盤上は大きく動いた。

 豊島は△3五銀と捨てて▲同飛と取らせ、△2六角と打って王手飛車取りをかけたのだ。豊島の策略が成功したのか、羽生はそれを見落としたのか……。控室の関係者は驚きの様子を見せた。

 実は、豊島の△3五銀から△2六角の王手飛車取りは、羽生が用意した▲1七角の返し技をうっかりしたものだった。終局後に「投了級の悪手」と反省の弁を語った。それでも51分の苦しい長考で局面を何とか治めたが、結果的に銀損して不利な形勢になった。

 羽生は▲5六角と中段に打つ攻防の好手で、優位を少しずつ広げていった。AI(人工知能)の形勢判断の数値は、《羽生95点以上・豊島5点以下》をずっと表示していた。しかし、羽生は慎重に時間を使って指し、終盤で勝ちを急がずに豊島の反撃を防いだ。そして、寄せに入って▲6二金の王手をかけたとき、羽生の指が震えた。それは勝利のサインでもあった。

「藤井さんとのタイトル戦を何とか実現できて…」

 羽生は寄せ切って豊島に勝ち、藤井王将への挑戦権を得た。羽生は7期ぶりに王将戦に登場し、藤井とのタイトル戦が初めて実現した。

【次ページ】 初対局で“藤井将棋”を絶賛した日

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