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「藤井(聡太)さんとのタイトル戦が実現できて…」羽生善治九段が“100期挑戦” 王将戦に見る天才伝説、52歳の自然体な将棋と生活 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2022/11/28 11:01

「藤井(聡太)さんとのタイトル戦が実現できて…」羽生善治九段が“100期挑戦” 王将戦に見る天才伝説、52歳の自然体な将棋と生活<Number Web> photograph by JIJI PRESS

王将戦、藤井聡太五冠への挑戦が決まった羽生善治九段

 羽生九段は2021年度公式戦の成績は14勝24敗で、初めて3割6分台で負け越した。順位戦では29期連続で維持したA級(名人9期を含む)からB級1組に降級した。加齢による衰え、AI時代の将棋への対応、などが問題にされた。

 しかし、2022年度は復調しつつある。公式戦の成績は20勝9敗(11月27日時点)で、6割8分台の勝率を挙げている。

 王将戦の記者会見で語ったように、主に横歩取りの戦型で新手法を用いて成功している。さらにA級から落ちたことで、肩の力が抜けて自然体になり、のびのびと指しているという見方もある。

谷川王将の羽生“七冠阻止”を間近で見た記憶

 羽生と過去の王将戦との濃厚な関連を紹介する。

 羽生が王将戦のタイトル戦に初めて登場したのは1995年。六冠を保持していた羽生名人は、七冠を目指して谷川浩司王将に挑戦した。羽生は最初に2連敗したが2連勝して巻き返し、勝負は3勝3敗の五分になって同年3月の第7局にもつれ込んだ。

 対局場は青森県の十和田湖の近くのホテル。その極寒の地にテレビ・新聞・雑誌などの報道陣や将棋ファンなど、合わせて300人ほどが訪れた。大半が羽生の七冠達成を見越したものだが、同年1月に起きた阪神・淡路大震災で被災した谷川を心情的に応援したいという人もいた。

 第7局は2日目の15時頃に無勝負の「千日手」となり、30分後に指し直し局が始まった。そして、21時すぎに谷川が勝った。

 谷川は意地を見せ、羽生の七冠を阻止した。私こと田丸九段も現地にいたが、羽生の蒼白とした表情が印象的だった。

 誰もが世紀の一瞬は夢と消えたかと思った。しかし、翌年にまた再来したのだ。

 羽生六冠は1995年にタイトルをすべて防衛し、1996年に谷川王将に再び挑戦した。同年2月には、羽生は谷川に4連勝して王将を獲得し、前人未到の「七冠制覇」を達成したのだ。羽生は「七冠はこの数年の夢でした」と喜びを語った。

王将戦の「ひのき舞台」で羽生九段が藤井王将に挑戦

 それにしても羽生の驚異的な持続力には敬服するしかない。

 羽生は1995年から2010年まで、王将戦のタイトル戦に16期連続で登場していた。通算の回数は18期で、王将の獲得は12期に達した。まさに王将戦の歴史を飾る「看板棋士」だった。

 2017年6月26日、藤井四段はデビュー戦から負けなしで29連勝の新記録を打ち立てた。羽生三冠は「29連勝は歴史的な快挙です。内容が伴っている点でも凄みがあります。ひのき舞台で顔を合わせる日を楽しみにしています」とコメントした。

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