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「YUSHIの華は認めるが…」RIZINでの“ホスト対決”に朝倉未来の『BreakingDown』、「何でもあり」に傾く格闘技界への疑問
posted2022/08/08 17:01
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
格闘技とは何か。
ここ数年、複雑に入り組み始めたこの競技について頭を悩ますことが多くなった。
先日開催された『RIZIN.37』(7月31日・さいたまスーパーアリーナ)では、第1試合でYUSHIvs.覇留樹という“東西ホスト最強決定戦”というべき一戦が組まれた。
YUSHIは昨年大晦日の三浦孝太戦で、コロナ禍で来日不可能となったブラジリアンファイターの代打としてデビューしたカリスマホストだ。過去にホスト雑誌のカバーを幾度となく飾り(源氏名は櫻遊志)、自らホストクラブを運営しているので同業界で知らぬ者はいない。
三浦にはサッカーボールキックで敗れたが、入場時の派手なパフォーマンスは大きな話題になった。極論すれば、入場シーンだけで飯が食える。その部分ではエンターテインメント性全開のプロレスラーにも全く引けをとらない。
YUSHIのキャラクターはオンリーワンだが…
果たしてYUSHIはこの日が総合デビューでもあった覇留樹に快勝したが、その前の入場も圧巻だった。「ある惑星の王子様」というテーマよろしく、2人の女性ダンサーを従え、光るサングラスをかけリズミカルに踊りながらの入場パフォーマンス。試合後、YUSHIは「宇宙人みたいな2人をダンサーにして、サイバーな世界観を会場で出せたんじゃないか」と満足げに振り返った。
「サングラスをとって『イエーイ!』とやったら、みんな(観客)も『イエーイ!』とやってくれたのですごく気持ちよかった」
しかしながら、YUSHIのオンリーワンといえるキャラクターが、ファイターとしてのクオリティに正比例しているとはいいがたい。YUSHIや覇留樹が研鑽を積んだ『宴』はホストファイトと呼ばれ、厳密にいえばアンダーグラウンドにカテゴライズされるイベントだ。格闘技専門の情報サイトに試合結果がアップされることもないが、ショーアップされたイベントであることは間違いない。
覇留樹との一戦は社会的に偏見の目で見られがちなホストの地位向上に一役買った。そういった目に見えぬ力を有しているところに格闘技のポテンシャルを感じるが、確固たるプロと同一線上に扱うことに違和感を覚えるのは筆者だけではあるまい。