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「ユヅルは憧れ。いつか会いたい」フィギュア“世界初”、ブラジルのトランスジェンダー選手14歳に聞いた“孤児院&両親がゲイカップル”の半生 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byHiroaki Sawada

posted2022/12/07 11:02

「ユヅルは憧れ。いつか会いたい」フィギュア“世界初”、ブラジルのトランスジェンダー選手14歳に聞いた“孤児院&両親がゲイカップル”の半生<Number Web> photograph by Hiroaki Sawada

世界で初めてトランスジェンダー選手としてジュニアGPに出場したマリア・レイクダル。ブラジルで本人に話を聞いた

 前編で触れた通り、複雑な家庭に生まれ、きょうだいと共に孤児院に収容され、ゲイのカップルに養子として迎えられた。トランスジェンダーとして生きることを選び、それゆえ周囲からの偏見や差別と闘い続けてきた。そして、ウインタースポーツ不毛の地ブラジルで、劣悪な練習環境に悩まされながら、フィギュアスケートの競技者として世界を目指す……。

 これまで彼女が乗り越えてきた障害を思うと、気が遠くなるような気がした。

マリアのことを知って、親たちが教室に習わせるのをやめた

 加えてブラジル人の大多数は、カトリックだ。旧約聖書の創世記に「神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された」、「神は彼らを祝福して言われた、『生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ』」とあり、現在もカトリック教会は、同性愛もトランスジェンダーも認めない立場を取っている。

「私とクレベールが運営するスケート教室の生徒の親たちは、我々がゲイのカップルであることは辛うじて容認していた。しかし、マリアがトランスジェンダーであることを知って、多くの親が子供にスケートを習わせるのを止めた。なぜかって? 自分の子供がマリアのようなトランスジェンダーになることを怖れたらしい。そんなことはありえないのにね」(グスタヴォ)

 マリアだけでなく、両親も世間の偏見と闘い続けている。

今後は? 女性ホルモン投与、性転換手術、資金集め…

 両親は、「男性としての発育を止める措置をしているが、性転換手術はしていない。本人が希望すれば、16歳になってから女性ホルモンを投与し、18歳以降に性転換手術を受けることになるだろう」と説明する。

【次ページ】 困難の多くは現在も続いており、今後も完全になくなることはない

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