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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「林下詩美は強い。そのイメージを取り戻したい」王座陥落から1年弱…“カッコいい女”はスターダムの頂に返り咲けるのか《特別グラビア》
posted2022/11/17 11:03
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
林下詩美が赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)を失ってから、およそ11カ月が過ぎた。
林下は今夏の『5★STAR GP』で自ら復活宣言をしたが、「復活はしたつもりでしたけど、形に残せていない」。新設されたIWGP女子の初代王者という夢にもチャレンジしたが、岩谷麻優という存在と「IWGP」という壁の高さを感じることになった。
「止まっていた時間」を動かし、赤いベルト戦へ
そんな林下にターニングポイントがやってきた。11月3日に広島で行われた刀羅ナツコとのシングルマッチだ。2人は2021年7月に赤いベルト戦を行ったが、刀羅が試合中のアクシデントで左膝の前十字靭帯を断裂。無念のドクターストップになってしまった。
それからずいぶん時間が経った。約1年3カ月、刀羅はリングに帰ってこなかった。
「次にやるときはベルトをかけて、という約束は守れませんでした。『歌なんか歌ってんじゃねえ』とかナツコに言われて、要するに『ふざけんじゃねえ』ってことでしょうけど、それはそれで私のプロレスの一部なんで。ナツコには『ベルトなくてごめん』と謝りました。以前の私だったら『お前が待たせ過ぎだ』という気持ちだったと思います。待っている間に、気持ちの荒々しさがなくなってしまったのかも。ただ、復帰したナツコとあの日の続きをできたのはよかったです」
林下は黒いバラを口にくわえて場外の刀羅にダイブし、勝利した。まるで「これが私からの復帰祝いだ」とでも言うように。
敗れた刀羅は潔かった。
「満足してるよ。私が見てきた中で、一番カッコよかったもん。そんなヤツに倒されたら本望でしょ。でも人間ってさ、バカじゃん? こういう気持ちってさ、明日には忘れてんだよ。つまり、私と詩美の戦いは今日で終わりじゃないってこと」
広島での試合後、「ようやく私の止まっていた時間も動き出しそうです」と語った林下は、9度目の防衛に成功した赤いベルトの王者・朱里の前に姿を見せた。まだ、林下のエンジンが全開でないことはわかっている。しかし、朱里と対峙した姿を見て「強い詩美が戻ってくる」という感触を得ることができた。