最後はそのピッチャーのベストピッチを待っている

「つまり、それは僕が待ってないところなんです。甘いところを待っていないんです、僕は。難しいところを待っているから。ど真ん中に来ると“ウッ”ってなっちゃう。最後はそのピッチャーのベストピッチを待っているんで」

　鋭い眼差しで語られるイチロー流の投手との駆け引き。良いボールを打つ、その打者としての姿勢は本人の言葉を借りれば、それが「相手へのダメージの与え方」なのだそう。一方で、抑え方は意外にもシンプルだ。

「ど真ん中3つなんですよ、つまり」

　その宣言通り、投手・イチローを操り、打者・イチローに対し1球目はど真ん中を選択するゲームプレーヤー・イチロー。その初球、ど真ん中の直球を打者イチローは空振り。2球目、再びど真ん中に直球を投じると、打者イチローはやや振り遅れてレフトフライ。強打者イチローを仕留めたイチローがスマートフォンから右手を放し、したり顔で語る。

「ど真ん中が一番良いんですよ、イチローは」

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「あいつは必ずいるんだ」っていうピッチャーになりたい

　自分のことは誰よりも自分がよくわかっている――。その自負と信念を胸に、毎打席自身をストイックに追い込み、MLBでの10年連続200本安打など打者としての金字塔を打ち立ててきたイチロー。では、投手・イチローがプロ野球の世界で誕生していたら、どのような記録を残したのか。

「（プロの）マウンドに立てるだけで十分幸せですよ（笑）。マウンドに立てる（能力がある）とするなら、（ローテーションの）穴を空けないピッチャーになりたい。どんなときも5日に1回はそこに立っている。一度も穴を空けない、『あいつは必ずいるんだ』っていうピッチャーになりたいです」

　毎試合フィールドに立ち、打席でヒットを放ち、守備ではファインプレーで魅せる。当たり前のように活躍を続け、フィールドに立ち続けた野手・イチローとしての歩みとも重なるような投手・イチロー像だ。

　イップスとなり半ば強引に野手へと専念させられた一流投手の卵・鈴木一朗。それから約30年の時を経て9日に登場する『パワプロアプリ』の投手・イチローには、叶わなかったプロのピッチャーへの思いも詰め込まれているのだ。

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