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「1日目は眠らず、2日目は20分睡眠だけ…」“日本新記録で”415km走ったクレイジーランナー・土井陵は全然寝ない男「5日弱で睡眠は計4時間半」
text by
千葉弓子Yumiko Chiba
photograph byTomosuke Imai
posted2022/11/05 17:07
「4日17時間33分」という驚異的な大会新記録でTJAR初優勝した土井陵
土井 まさに自分の中ではそのイメージです。「脳を整える」という意味合いが強いかもしれません。走っている最中には、たとえばエネルギー補給や消化のことなど煩雑な情報が身体から脳へ発信されていると思うんですよ。それを整理する、脳をリセットするというのかな。
実は415kmを走っても、身体自体はむちゃくちゃ疲れているわけではないんです。普段のレースに比べて走るスピードは速くないので負荷はそれほど高くないですし、自分では激しく筋破壊しているという意識もないので。どちらかといえば僕の場合は、疲れた脳が身体の動きをストップさせようとしている感覚との戦いという側面が強いです。だから「寝なきゃだめだ」という脳からの信号を仮眠でリセットするわけです。
「普段は1日7~8時間寝る」
――低負荷とのことでしたが、レース中の平均ペース、平均心拍はどれくらいですか。
土井 GPS時計の換算は睡眠時も含まれているので正確とはいいにくいのですが、平均速度は15’32”/km、平均心拍数は113bpmです。ちなみに平常時は平均して45bpmくらいです。
――平均心拍数が113bpmというのはたしかに低いですね。「低負荷」というのもうなずけます。それにしても、アルプスを3つ越えて筋破壊の感覚がそれほどないということに驚かされます。
土井 もちろんノーダメージではないですよ。ただ、負荷の低いパワーを長時間に渡って出力し続けているというイメージなんです。つまり急激に高い負荷の運動をするのは無理なんですけど、低出力をずっと出し続けるための「回復」を、走りながらできているということです。
それができているのは、脳の問題じゃないかと思っています。脳が「疲れている」という信号を出しているから身体が走るのを止めさせようとするわけで、実際には身体は動ける状態。だから短い仮眠で脳だけリセットすれば、その後も低出力で運動し続けることはそれほど難しいことではありません。
――脳から「動き続ける指令を出す」のはエンデュランススポーツの根幹ですね。
土井 よく「長く動き続けられる動物は人間くらいだ」と言われていますよね。つまり人間はいい意味でも悪い意味でも、日常では脳で行動を制御してしまう。その制御装置を緩めれば、人間にももっと可能性が生まれるのかなと思います。あくまで持論ですが。
ただそういったコントロールも、いつでもできるかといったらそうではない。精神的な影響がものすごく大きいと思っています。TJARのようなレース以外のときには難しいでしょうね。いろんな人の応援があったり、さまざまな要素が絡みあったりして可能になっていることだと思います。実際、僕も日常はよく寝るんですよ。7~8時間は寝ないと済まない方で、子どもより先に寝てしまうくらいですから(笑)。
レース翌々日には「普通に消防署で働いていた」
――栄養補給と睡眠の関係はどう捉えていますか。