フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
“りくりゅう”が見せた「くしゃくしゃの笑顔とハグ」の舞台裏…怪我からの復活、三浦璃来&木原龍一を支えたコーチからの言葉「常に強くあれ」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/11/05 11:02
スケートカナダ初優勝を果たした“りくりゅう”こと三浦璃来と木原龍一
木原「先シーズンの実績は忘れました」
会見で、「昨シーズンは世界の表彰台に立ち、心境に変化があったのか」という質問が出ると木原がマイクに向かってこう答えた。
「昨シーズン、オリンピック、世界選手権を経験させていただいて、自分たちもその結果を受けて自信を持てるようになりました。今シーズンその結果があるから自分たちは大丈夫というふうに開幕前は思っていたんですけど、7月に怪我をしてしまって、その自信はすべてなくなってしまった。先シーズンの実績っていうもの、全て忘れました。とにかくまた新しいシーズンというふうに感じています」
二人は2カ月間ペアの練習をすることができず、その間、三浦は脱臼の治療とリハビリなどに専念。木原はもっぱら単独で氷の上に立ち、週末だけ二人で滑った。ようやくカナダに戻って練習を本格的に再開した時は、9月の半ばになっていた。このスケートカナダに出場する、わずか1カ月余り前のことだったという。
くしゃくしゃの笑顔で三浦を抱きしめて…
それでも新フリー「Sleeping at last」は、サイドバイサイドのトウループジャンプが乱れた以外、ミスを最低限に抑えてきれいにまとめることができた。
無事に滑り終えて最後のポーズをとると、木原はくしゃくしゃの笑顔になって三浦をぐっと抱きしめた。その次の瞬間には力尽きたかのように、がくりと氷の上に両手をついた。三浦はそんな木原をいたわるように氷の上にかがみこみ、二人は改めて笑顔になってハグを交わし合った。
どれだけの不安を抱えて、ここまで来たのだろうか。見ていて思わずこちらも胸に熱いものがこみ上げてきた。
「今日は優勝することができて、すごく嬉しいです。僕たちは、璃来ちゃんが怪我をしてしまったので、9月の半ばに練習を再開して、フリーのあのプログラムって2週間前にようやくスタートすることができて、今日は今シーズン5回目のフルロングだったので、正直どこまで滑れるか、全くもって自信はなかったんですけれども…本当に皆さんの応援のおかげで、何とか最後まで滑り切ることができて本当に嬉しく思います」
木原は、演技後の会見でこう語った。