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「世界一と胸を張って言える」名前が消えたホンダが31年ぶりに獲得した、一番欲しかったコンストラクターズチャンピオン
posted2022/11/06 06:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Masahiro Owari
今季のレッドブルはシーズン中盤から独走。マックス・フェルスタッペンが日本GPでドライバーズチャンピオンに輝くと、レッドブルはその2週間後のアメリカGPでコンストラクターズ選手権を制した。
レッドブルでチーフメカニックを務めているホンダの吉野誠は、どこか充足感に満ちた表情でタイトル獲得を喜んだ。
「『自分たちが作ったパワーユニット(PU)が世界一になった』と胸を張って言えるのが、コンストラクターズチャンピオン。ホンダにとって一番欲しかったタイトルです」
2021年の最終戦・アブダビGPでフェルスタッペンがファイナルラップで逆転優勝してドライバーズチャンピオンに輝くと、PUを供給していたホンダのスタッフたちは抱き合いながら、その栄冠を喜んだ。
ホンダにとってドライバーズタイトルは1991年以来、30年ぶり。2015年にF1に復帰しながら数年間は艱難辛苦を味わったホンダのスタッフが、F1活動終了によるラストチャンスでつかんだタイトルに涙するのは当然だった。
30年ぶりのタイトルでも足りないもの
だがスタッフの間には、どこかまだ満足できない気持ちがあった。吉野は、当時の状況を次のように述懐する。
「ホンダにとっても久々の栄冠だったので、マックスの王座獲得に貢献できたことはうれしかった。ただ、ドライバーズチャンピオンは、あくまでドライバーの栄誉です。その一方で我々ホンダはコンストラクターズ選手権を戦っており、2021年はメルセデスにあと一歩及ばなかった。だから、昨年のアブダビではマックスのチャンピオン獲得を喜びながらも、来年(2022年)こそ取り損なったコンストラクターズチャンピオンを獲得するぞという気持ちを、すでに心の中に抱いていました」
F1活動を終えたはずのホンダはレッドブルからの要請を受け、2022年はPUの開発・製造をホンダ・レーシング(HRC)として支援。レッドブル・パワートレインズ(RBPT)を通じ、レッドブルとアルファタウリの2チームにPUを供給している。