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「藤井聡太王将vs羽生善治九段の初タイトル戦かも?」「広瀬章人八段が藤井竜王のおやつを…」観る将マンガ家が描く“秋のエモい対局”
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph byBUNGEISHUNJU/Junsei Chida
posted2022/11/03 06:00
「藤井-羽生」の初タイトル戦となるか?観る将マンガ家が描いた「2022年10月の将棋ハイライト」。過去のイラストは関連記事からご覧になれます!
この就位式、2020年から僕ら夫婦がずっと注目していたものがあります。それは藤井王位がもらう記念品です。2020年は「壺」、2021年は「鉢」となかなか大きなものをもらっていて、今年はどうなるんだろうと思っていたら……香炉でした。
「おや、ちっちゃくなった!」と思っていたところ、よくよく調べてみると人間国宝である福島善三さんが作られた「中野青瓷瓜形香炉」というものだとか。さすが格式が高い……。
3)羽生九段が王将戦挑決Tで怒涛の5連勝
藤井五冠が王者として待つ「王将戦挑戦者決定戦トーナメント」、今年の主役になっているのは、羽生善治九段です。勢いのある若手から順位戦A級棋士、そして渡辺明名人や永瀬王座といったタイトル経験者を次々と撃破しています。
<第72期王将戦挑戦者決定戦リーグ戦績>
5勝0敗 羽生善治九段(3)
2勝1敗 豊島将之九段(5)
2勝2敗 永瀬拓矢王座(2)近藤誠也七段(4)
1勝2敗 服部慎一郎五段(5)
1勝3敗 渡辺明名人(1)
0勝3敗 糸谷哲郎八段(5)
※11月2日時点。カッコ内の数字は前期成績に基づくリーグ序列
圧巻だったのは、10月26日に行われた渡辺名人との1局でした。2020年以来となる「黄金カード」は、羽生九段先手で対局が始まりましたが……正午前に早くも千日手指し直し。指し直し局では渡辺名人が珍しく「横歩取り」を指す展開となる中で、羽生九段は飛車をダイナミックに動かし、渡辺名人は自陣角で対抗するというジリジリとした戦いに。最終的には渡辺名人が投了し、羽生九段が勝利しましたが、見ごたえたっぷりの対局でした。
勢いに乗る羽生九段は31日、永瀬王座との対局でも94手で勝利。最終局を残した状態で1位を決めました。感想戦後の取材などを見ていると羽生九段からも“5連勝は予想できなかった”とのニュアンスの言葉がありましたが、やはり将棋界のスーパースターはいまだ健在、と畏敬の念を感じます。
この時点で羽生九段と成績が並ぶ可能性があるのは、羽生九段との対局を含む3局を残している豊島九段のみとなりました。3連勝すれば羽生九段との挑戦者決定プレーオフ、もし豊島九段がいずれかの対局で敗れれば、羽生九段が「通算タイトル100期」を懸ける藤井王将に挑む構図になります。2人の初タイトル戦も見たいし、藤井王将への雪辱に懸ける豊島九段の静かなる闘志も見たい。悩ましすぎますが、2023年初頭に向けた楽しみがもうできたとポジティブに考えています(笑)。
里見女流五冠の戦いぶりにも心打たれる
女流棋士では里見香奈女流五冠が怒涛の戦いを見せています。