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イクイノックスが見せた「ラスト2完歩の逆転劇」 観客を沸かせた大逃げ、強さを証明した3歳世代…天皇賞・秋はなぜ名レースになった? 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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posted2022/10/31 12:26

イクイノックスが見せた「ラスト2完歩の逆転劇」 観客を沸かせた大逃げ、強さを証明した3歳世代…天皇賞・秋はなぜ名レースになった?<Number Web> photograph by Photostud

10月30日、天皇賞・秋で優勝し、GI初制覇となったイクイノックス

調教師「どこに限界があるのかわからない」

 イクイノックスは、4コーナーを左手前で回って直線で右手前に替えたが、ラスト200mを切ってジャックドールに馬体を併せたときに、左手前に戻してスパートした。ダービーのときは、直線で左手前に戻してから末脚が鈍っていたのだが、今回は、そこからまた2段階目の加速を見せた。

 中間を過ごすノーザンファーム天栄の木實谷雄太場長によると、イクイノックスは、馬体の左右にアンバランスなところがあるため、左前脚と左肩に疲れが出やすいのだという。そうした左右のバランス差を修正し切れず、ダービーでは左手前に戻してしまったようだが、今回、同じように手前を替えながらもグーンと伸びたのは、道中でロスがなかったぶんと、成長ぶんか。

 木村調教師によると、ギリギリ滑り込んだような状態で、もっとよくなる余地を残したまま、とてつもない強さを見せた。前述した最少キャリア5戦での古馬GI制覇記録は、ファインモーション、リアルインパクト、フィエールマン、クリソベリル、レイパパレ、エフフォーリアといった6頭の名馬の記録を更新するものだった。

 これがキタサンブラック産駒として初のGI勝利になったと同時に、史上4組目の天皇賞・秋親仔制覇となった。5年前、2017年の不良馬場の天皇賞・秋を父が制したときも、今回と同じ4枠7番だった。

 4度目の天皇賞・秋制覇をなし遂げたルメールは、「今日がイクイノックスにとって最初のGIですが、最後じゃない。キタサンブラックの仔だから、これから強くなる。あらためてGIを勝てると思います」と今後にさらなる期待を寄せる。

 木村調教師がレース前から「天才」と評していた素質馬が、春の二冠でともに2着に惜敗した悔しさを見事に晴らした。「どこに限界があるのかわからない」と敏腕トレーナーに言わしめるイクイノックスの次走は、ジャパンカップか有馬記念か。

 イクイノックスの物語は、まだ始まったばかりだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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