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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ヤクルト今野龍太の母校も休部に…急増する「少人数野球部」のリアルとは?「20点、30点取られますし、心折れそうになります。でも…」
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/10/28 11:04
今年の日本シリーズでも好投を見せたヤクルト・今野龍太投手(27歳)
「専用球場」があっても野球部員はゼロ
あれから10年。高校野球の過疎化は急速に進み、連合チームの数は全国で10倍以上に増えた。少人数野球部が昔ほど珍しくなくなってきた中で、岩出山の現在の監督、岩渕翔教諭が赴任した6年前から現在までの状況を語ってくれた。
「最初の年は槍投げの選手を助っ人に入れて9人の単独チームで戦いましたが、その後はずっと連合チームでの大会出場。就任して最初の2、3年は中学で野球部だった生徒に声をかけて誘っていたのですが、最近は中学の野球部も部員不足が深刻化しています。やっと見つけた経験者に声をかけても、連合チームって聞くだけで、抵抗があるようで。学校の配慮もあり、廃部ではなく休部という形で残してくれているだけでもありがたいという状況です」(岩渕)
熱心な監督がいて、専用球場もあるのに、肝心の野球部員がいない。
元高校球児で、大学では硬式クラブチームでプレーした岩渕監督は、1年半使われていない専用グラウンドに除草剤を撒きながら、グラウンドの維持に努める毎日だ。野球部が休部している間はボランティア部の顧問を「兼務」しているが、そちらは50人近い部員がいると言う。冬季アルバイトや、長髪も認めるなど、いまどきのルールに合わせて試行錯誤しているが、なかなか野球部員が集まらない。もともと女子高からスタートした公立高校で男子生徒が少ないところも部員不足に直結する課題になっている。
「先輩の今野君が日本シリーズで活躍したので、学校全体で頑張れの人文字を作ってメッセージを送り、本人からもお礼のヤクルト飲料が届いたりして貴重な交流ができています。岩出山高校の魅力をもっと発信して、生徒が集まってくる学校にしないといけませんね」(岩渕)
2017年、宮城出身の東北学院大・鈴木遼太郎が日本ハムからドラフト6位指名されたとき、母校の石巻西の野球部員が激増したことがあった。岩渕監督は「今野君も頑張っていますし、廃部にだけはしたくありません」と孤軍奮闘しながら、生徒が野球部の門をたたいてくれる日を心待ちにしている。