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敗れた騎手が語った「でかい鼻差です」 大接戦となった菊花賞、アスクビクターモアはなぜ勝てたのか?「何とか凌いでくれないかと」
posted2022/10/24 12:35
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Photostud
春二冠の連対馬不在の混戦を断ったのは、強力な先行力を武器とするディープ産駒だった。
クラシック三冠を締めくくる第83回菊花賞(10月23日、阪神芝内回り3000m、3歳GI)で、田辺裕信が騎乗した2番人気のアスクビクターモア(牡、父ディープインパクト、美浦・田村康仁厩舎)が鼻差の激戦を制して優勝。GI初制覇を遂げ、皐月賞5着、ダービー3着に終わった春の悔しさを晴らした。
2着は追い込んだ7番人気のボルドグフーシュ、3着は4番人気のジャスティンパレス。1番人気のガイアフォースは8着に終わり、昨年のホープフルステークスからつづく平地GIの1番人気はワースト記録をまたも更新する16連敗となった。
3コーナーでレースを「動かした」田辺
好スタートを切ったセイウンハーデスが、最初の1000m通過58秒7という、長距離戦としては「超」をつけてもいいハイペースで逃げた。
アスクビクターモアは、単騎で逃げるセイウンハーデスから3、4馬身後ろの2番手につけている。セイウンハーデスはもちろん、それを追いかけるアスクビクターモアもオーバーペースに見えた。が、田辺は、この展開に危機感を抱いてはいなかった。
「抑え込むよりマイペースでいたいと思い、ついて行くには速いペースでしたが、馬が力まないように気をつけて乗りました」
自分も楽ではないのだが、それは後ろの馬にとっても言えることだ。同じようにキツいのなら、その時点で少しでも前に位置している馬のほうが有利になる。
2周目の3コーナーでレースが動いた。いや、田辺が「動かした」と言うべきか。田辺が手綱を押して促すと、アスクビクターモアはラスト800m付近から前を行くセイウンハーデスとの差を詰め、ラスト600mを通過したところで外から並びかけた。そのままの勢いで先頭に立って4コーナーを回り、2番手に3馬身ほどの差をつけて直線に向いた。