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ヤクルトはドラフトでなぜ“持っている”のか? 伝説は“くじ運最強の社長”から小川GMまで…球団職員「そのツキで私の宝クジを買って下さい」 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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posted2022/10/20 11:08

ヤクルトはドラフトでなぜ“持っている”のか? 伝説は“くじ運最強の社長”から小川GMまで…球団職員「そのツキで私の宝クジを買って下さい」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

1980年代から「ドラフトくじ」で無類の勝負強さを誇ってきたヤクルト。その理由を探る

連覇の立役者? ヤクルトの“新くじ引きスター”

 ヤクルトは逆指名ドラフトの影響もあってか、2001年を最後に優勝から遠ざかってしまう。しかし、2007年に重複抽選方式が復活すると、相馬球団社長とは違うタイプの“くじ引きスター”が誕生する。以下の『ドラ1抽選結果』を見てほしい。

2010年 ×斎藤佑樹 ×塩見貴洋 ○山田哲人    

2012年 ×藤浪晋太郎 → 石山泰稚(単独指名)          

2013年 ×大瀬良大地 ○杉浦稔大

2017年 ×清宮幸太郎 ○村上宗隆    

2018年 ×根尾昂 ×上茶谷大河 → 清水昇(単独指名)        

 山田は2015年に史上9人目のトリプルスリーを達成し、14年ぶりの優勝の立役者になった。他の選手を見ても、現時点では2013年の杉浦を除いた『外れ1位』が『本命1位』よりも活躍している。昨年、今年の連覇も3番・山田哲人、4番・村上宗隆の強力クリーンアップ、清水昇、石山泰稚という鉄壁のリリーフ陣なくしては達成できなかっただろう。

 このくじを引いた人物とは――。

 現在、ゼネラルマネージャー(GM)を務める小川淳司である。2010年のシーズン途中、高田繁監督の辞任を受けて代行として指揮を執り、オフに正式に監督に就任した。その直後のドラフトで、ヤクルトは神宮のスターである早稲田大学の斎藤佑樹を1位指名。小川監督は初めての抽選に臨むが、日本ハムの藤井純一球団社長に当たりくじを引かれ、苦杯を舐める。外れ1位で塩見貴洋を狙うも、楽天と競合して星野仙一監督に敗れる。外れ外れ1位で、ようやくオリックスの岡田彰布監督に勝ち、山田哲人の交渉権を獲得した。

 山田はトリプルスリー3度という前人未到の記録を達成し、小川監督の抽選負けをプラスに変えた。

〈斎藤、塩見を外したときには自分の運のなさを嘆きましたね。でも、後に知った話ですけど、山田はヤクルトに入りたくて仕方がなかったそうです。これはこじつけかもしれないけれど、山田の“ヤクルトに入りたい”という思い、山田の運がすべてだったんだなと思います。だから、後の山田の活躍は必然だったのかもしれない。〉(2017年9月26日配信・文春オンライン)

 自分の手柄ではなく、選手のおかげと謙虚な姿勢を崩さない小川の強運は、1年だけにとどまらなかった。

【次ページ】 山田哲人以外にも…「外れ1位」が大活躍

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