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[ナンバーノンフィクション]キタサンブラック「磁力に導かれしもの」
posted2022/10/22 07:03
text by
寺島史彦(Number編集部)Fumihiko Terashima
photograph by
©Cygames, Inc.
いつも全力で、ひたすらタフで、無類のお人好し。彼女のもとには、自然とウマ娘たちが集まってくる。周囲の支えを受けながら、壁をよじ登ってきた。デビューから悩み続けた彼女が、苦難の1年を経て進むべき道を見つけた、覚醒の秋までの物語。
キタサンブラックの物語は、2つの出会いからはじまった。
1つは親友であるサトノダイヤモンドとの出会いである。
幼い頃に出会った同い年のふたりは、まるで姉妹のように心に同じ色の火を灯して、クラシック三冠を一緒に走る約束を交わした。やがて同じ日に学園の門をくぐった。1つの道を2人で歩いていくことができる、かけがえのない存在だった。
もう1つは憧れのウマ娘、トウカイテイオーとの出会いである。
彼女の疾走は常にスタンドのファンたちのうねりを呼んだ。キタサンブラックは、無敗で皐月賞を制した勇姿をレース場で観た。伝説を作らんとするウマ娘の虜になり、背中を全力で追いかけていくと心に決めた。
彼女は恵まれていた。人生を並走していく相手も、目指すべき大いなる指針も、早くから持っていた。
トゥインクル・シリーズにおいて、レースは時に残酷である。勝利か敗北か、という結果だけではない。スタートからゴールまで同じ空間、同じ時間を共有しながら、必ず主役と脇役に二分されるからだ。檜舞台でスポットライトを浴びる者もいれば、舞台袖で視線を向けられることのない「その他大勢」もいる。
デビューしてからのキタサンブラックは、大勢のひとりだった。彼女に注目する者は、ほとんどいなかった。視線はライバルたちに注がれていた。彼女は振り返る。