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[主戦騎手が語る]渡辺薫彦「ナリタトップロードがすべての礎です」
posted2022/10/22 07:00
text by
田井秀一(スポーツニッポン)Shuichi Tai
photograph by
SANKEI SHIMBUN
ひたむきなステイヤーは“覇王”と“一等星”を相手に世紀末のターフで激闘を繰り広げた。人馬ともに唯一のGI制覇となった菊花賞への歩みを鞍上が回想する。
'99年クラシック世代、3強物語。テイエムオペラオー、アドマイヤベガと共に競い、一途に頂点を目指したナリタトップロードと渡辺薫彦にファンが魅せられたのは、単なる判官贔屓ではない。どこまでもひたむきな人馬には愛すべき理由があった。
激闘から20年以上が経ち、「ウマ娘」に3強が揃って登場してライバル関係が描かれ、現役を知らない若年層にもその存在が浸透しつつある。「凄くありがたいです。あの2頭さえいなければ……と考えたこともあったけど、彼らがいたからこそ頑張れた面もありました」。
渡辺の師匠、沖芳夫の厩舎に美しい栗毛馬が入厩したのは'98年。真面目で頑張り屋。ただ、気性難で知られた父サッカーボーイの面影も。「放馬している馬をよく見たらトップロードだったことがあって。カッとしやすい面はありましたね」。3戦目に折り合いを教え込むまでのデビュー2戦は口角から出血するほど行きたがったという。
4戦目のきさらぎ賞で人馬とも重賞初制覇。続く弥生賞ではクラシック最有力アドマイヤベガを完封した。6年目でGI騎乗経験が2度しかなかった渡辺だが、クラシックを強く意識するようになっていった。
しかし、春2冠は惜敗。雨の皐月賞はオペラオーに敗れ3着。良馬場の鬼と評された奇麗なストライド走法はぬかるんだ馬場が天敵。力を出し切れずに終わった。