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[“三冠目”の描き方]ドラマに満ちた、「ウマ娘」の菊花賞。
posted2022/10/22 07:01
text by
屋城敦Atsushi Yashiro
photograph by
©Cygames, Inc.
新旧さまざまな名馬をモチーフにした“ウマ娘”たちを主人公とし、徹底的に調べ上げた史実のエピソードを織り交ぜながらその物語を描いていくクロスメディアコンテンツ『ウマ娘 プリティーダービー(以下、『ウマ娘』)』。物語はトレーナーとの絆やライバル対決、ファンやマスコミとの関係性といったテーマを軸に語られる。物語を大切にし、随所に史実の要素を落とし込んだその内容は高く評価されている。
ゲームでは、モチーフとなった馬が実際に走っていたかどうかに関わらず、競馬における2歳戦、3歳戦、古馬戦に準じて“ジュニア級”、“クラシック級”、“シニア級”という3年間の物語が描かれる。そのため、クラシック最終戦として数多の名勝負が繰り広げられてきた菊花賞は、作中では最後の1年=シニア級に向けたターニングポイントとして扱われることが多い。前半戦の区切りとなったり、後半戦への伏線が張られるなど、重要なレースである。本稿では、『ウマ娘』で描かれる菊花賞の中から3つの戦いを、元になった史実を交えながら紹介していこう。
まずは、'92年のクラシック戦線をモデルとしたミホノブルボンとライスシャワーの戦い。このふたりの物語は、史実同様に“距離の壁”を乗り越えながら世代トップをひた走るミホノブルボンを、ライスシャワーが追いかけていくという流れとなっている。坂路でスパルタ調教を重ね“サイボーグ”と呼ばれたエピソードが由来なのか、感情表現が苦手で「オーダーを受理。データ参照」など、まさにサイボーグのような言動をするミホノブルボンと、“刺客”と呼ばれヒール役でもあったためかネガティブな性格で、セリフの多くに「……」と入るライスシャワー。レースでの衣装にも、史実における勝負服のカラーリングだけでなく、キャラクターも反映されているようだ。個性豊かなふたりは、レースを重ねるごとに、トレーナー(=プレイヤー)を介して関係を深めていく。そして菊花賞の前には、ライスシャワーが「ブルボンさんに追いつきたくて……ううん。ブルボンさんに、勝ちたくて……!」と決意表明をし、レース後にはついにライバルとしてお互いを認識するようになるのである。レース結果は、それまでの育成内容次第で変化するが、両者とも、勝っても負けてもその後の戦いに向けて決意を新たにすることとなる。