“外敵”のイメージを変えたすずの実力

　スターダムではタッグマッチでの対戦はあったもののシングルがなかなか組まれなかった。ようやく実現したのが10月1日のリーグ最終戦。ファンからは「引っ張りすぎではないか」という声もあったようだ。すずもじれったく感じていた。ただジュリアは「このタイミングでよかった」と言う。

「リーグ戦の中で、すず本来の実力がスターダムのファンにもしっかり伝わったので」

　スターダム参戦当初のプロミネンスは“外敵”のイメージが強かった。ユニットの個性として凶器を使う場面も。スターダムファンから「凶器を使わなければ何もできないのか」という批判も起きた。だがアイスリボン王者の経歴はダテではない。「デスマッチがやりたいと言ったのも、通常ルールで結果を出したから」とすず。もちろんジュリアもすずの力をよく分かっていた。5★STAR GPで通常ルールのシングルマッチを重ねれば、すずの評価は必ず上がると確信していたのだ。

「あの子は天才ですから。練習でも受身だったりスワンダイブ、ムーンサルトがすぐできるようになった。やってみたらできた、という感じでしたね。プロレスをやるために生まれてきたような人間ですよ。その上で一人で繰り返し自主練習もするタイプ。こんな凄い選手がいるんだとスターダムのファンに分かってもらった上でシングルがやりたかったし、すずならそうなると思ってました」

ハードコアマッチにて、すずはジュリアをパイルドライバーで叩きつける。テーブルが壊れる強烈な一撃だった

「SNSで襲撃予告みたいなものまできました」

　すずもリーグ戦の中で手応えを掴んでいった。開幕当初は肩の負傷があり、新型コロナウイルス感染での欠場も。しかし現ワンダー王者、上谷沙弥に勝ったあたりで「思いっきりギアが上がりました」という。

「スターダムに出始めた頃はメチャクチャ言われてましたね。SNSで襲撃予告みたいなものまできましたから（苦笑）。でも今はなくなりました。ポジティブな声が多いです。デスマッチ、ハードコアをやることへの否定的な意見も、もう聞かないですね。こっちが何かやることを変えたわけではないんですけど。でもシングルは相手のことをより知ることができるので楽しいというのはありますね。前より“素”でできてるかもしれない」

1月29日の名古屋大会で参戦表明し、ジュリアと向かい合ったプロミネンス

　リング上でのふとした一言など、随所に明るさやユーモアを感じさせるのもすずの魅力だ。それがスターダムでも伝わっていった。上谷をはじめ、リーグ戦の中で気になる選手が増えたとすずは言う。「MIRAIもそうだしスターライト・キッド、岩谷麻優……もう全員ですね（笑）」。それでも、ジュリアへの気持ちだけは変わらなかった。怒りと恨みは消えなかった。

「誰と闘っても、勝っても負けても結局はジュリアの顔が頭に浮かぶんです」

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